出版社内容情報
足利尊氏・直義は、動乱のなか兄弟で室町幕府を築き上げたが、のちに対立して観応の擾乱となる。両者の個性や政策を取り上げながら、とくに兄弟による共同統治の安定期に焦点をあてて解説する。
山家 浩樹[ヤンベ コウキ]
著・文・その他
内容説明
武家政権は、将軍となる武家に幅広い支持が集まることによって成立する。将軍となる武家には、何が必要だろうか。まずは武力でほかを圧倒することだろうが、それだけでは政権として継続するのは難しいだろう。統率する者として、ほかの武家とははっきり異なる正統性をもつこと、言い換えれば権威の確立が求められる。室町幕府の場合、樹立した足利尊氏・直義兄弟、およびそれを支持する者たちは、権威の確立にどのように腐心しただろうか。ふたりは最後には対立してしまうが、共同で何をめざしたのか、という視点から、権威確立のようすを概観してみたい。加えて、ふたりによる草創期は、のちの幕府にどのように位置づけられたか、にもふれる。
目次
ふたりによる統治
1 生誕から政権樹立まで
2 足利氏権威の向上
3 政策とそれぞれの個性
4 ふたりの対立とその後
5 ふたりの死後
著者等紹介
山家浩樹[ヤンベコウキ]
1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科国史学専攻修士課程修了。専攻は日本中世史。東京大学史料編纂所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるわか
19
足利尊氏と弟直義は、鎌倉幕府の崩壊、建武政権の成立、建武政権の崩壊、室町幕府の成立の流れのなかで、政権の確立という同じ目的で協力し共同統治を行った。しかし、互いに対立するに至り、直義は対立のなかで死を迎える(観応の擾乱)。正統性の確立:①尊氏および足利氏が源氏(頼朝)の正嫡であり、源家の棟梁にふさわしいこと:頼朝の追善・法華堂、八坂塔供養。左馬頭、篠村八幡宮、笙。家時置文。②北条政権の継承:高時他北条氏の追善、子女の保護・円成寺。③建武政権の継承:後醍醐天皇の追善・天龍寺建立。2018/05/17
中島直人
6
(図書館)再読。錯綜していてきろくも少ないこの時代の経緯を分かりやすく解き明かしてくれる。もう少し図面や絵があると、もっと楽しいと思う。2021/07/12
MUNEKAZ
6
尊氏と直義について、二頭政治期に焦点を当てて紹介している。源氏の嫡流、北条得宗家、そして建武政権の後継者として権威付けをしていく様が描かれている。「引きこもり」と言われがちな尊氏の姿も、鎌倉幕府の摂家・宮将軍に通ずるものがあり、実務を超えた存在として自身を主体的に位置付けたのではないかという指摘は面白い。また義満以降の将軍が、尊氏を幕府の始祖として敬意は払うが施策は引き継がなかったり、直義は忌むべき先祖として封印したりと二頭政治期に高い評価を与えていないのも興味深かった。2018/03/22
紫
4
ボリューム的には百ぺージ弱のブックレット。足利尊氏・直義兄弟について平易に教えてもらえる入門書かと思いきや……ぜんぜん、そんなことはなかった! 室町幕府初期政権の統治と権威づけに焦点を絞った解説書。鎌倉幕府の滅亡から南北朝の分裂にいたるまでの経緯や、兄弟が対立した観応の擾乱については最小限の説明で片付けてしまっているので、足利兄弟の事績について基本的なことから知りたいという読者にとっては肩透かしであります。足利直義が死後に怨霊として恐れられていたことは初耳だったので驚きでした。星四つ。2020/12/17
中島直人
3
(図書館)読了2019/03/16