内容説明
今様狂いの宮様がどうした具合か帝位についた。少々奇妙なその性癖ゆえに、「暗主」と揶揄された後白河の政治は、芸能民・手工業者とともに遊興のなかにあり、白河院・鳥羽院の政治から逸脱していく。その一方で、この時代は「聖代」を実現するため、信西・二条天皇・清盛などが徳政を行った時代でもあった。あざやかなコントラストのなか、やがて後白河をめぐる葛藤が、武家権力の中世を招きよせていく。
目次
臨終の光景
1 その人格
2 遊興の王権
3 政治の仕組み
4 後白河院政を支える人びと
5 平氏と後白河
6 新制・徳政
7 内乱を越えて
著者等紹介
遠藤基郎[エンドウモトオ]
1963年生まれ。東北大学大学院博士課程修了。専攻、日本中世史。現在、東京大学史料編纂所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ノルノル
3
・上皇人格評に「アスペルガー症候群の徴候」をみて首をかしげる。 ・一種の「ポピュリズム的」上皇。 ・信西一門の優秀さ、信西の政治理念が初期鎌倉への橋渡しに。 ・後白河と仏教の関係の記述が希薄、息子守覚の記述無し、この領域からみると後白河の呪術王権観が一層明らかになったのでは。2018/08/11
うしうし
3
県図書本を一気読み。「暗主」(『玉葉』)と評価される後白河院の特徴を年代を追ってではなく、人格・政治の仕組み・支える人々・平氏など、テーマで区切って記述しているのが本書の特徴か。前半部分の「人格」についてはかなり強烈な印象をもち、興味をもって読み始めたが、「政治の仕組み」・「新政・徳政」の項については、ベースとなる知識が乏しく、よく理解できなかった。まだまだ知らないことがたくさんあることを実感。2015/06/19
そーだ
3
借り物。とても面白かった。86ページしかないのがかえって物足りないぐらいだった。しかし、本筋とは関係ない個所で間違いが2つある。ひとつは3ページの後白河関係系図で、育子が養女となっていること。育子は実子である。もうひとつは、9ページの信頼の頭注で、信頼が善勝寺流となっていること。善勝寺流とは、房前の庶子・魚名の子孫の一系統を指すはずで、道隆の子孫である信頼は善勝寺流ではない。2012/10/02
hr
1
序盤に提示した人物像に終始縛られているような印象。著者は史料を追いかけるだけになっていないだろうか。「吾妻鏡」の記述を完全な事実のように提示するのはどうかと思う。どのような記述も、「可能性の一つ」として論じなければ、歴史を利用する態度に近付いてしまい、危うい結果になる。「歴史」は利用するものではなく、過去と向き合う営みそのものだと思うけど。2018/06/17