内容説明
日宋貿易において、日本からの重要な輸出品のひとつであった「硫黄」。その硫黄というモノの動きを追いかけていくことにより、ある歴史のつながりがみえてくる。その歴史のつながりとは、どのようなものであったのか。アジア各地に残されたさまざまな史料をつなぎあわせながら、「海域アジア」の広がりのなかで描きだす。
目次
「硫黄」への注目
1 硫黄輸出の開始とその背景
2 日本産硫黄の大量買付計画
3 硫黄輸出と九州南方の島嶼
4 朝鮮半島、東南・内陸アジアからの硫黄
5 西アジアの史料にみえる硫黄
海域アジアの「硫黄の道」
著者等紹介
山内晋次[ヤマウチシンジ]
1961年生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学、大阪大学)。専攻、日本古代史・海域アジア史。現在、神戸女子大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ようはん
20
硫黄から見た日宋貿易。北宋といえば火薬の発明があるが、その原料の一つである硫黄は北の遼への警戒による火薬兵器の必要性から需要が増すが火山の無い北宋の領域では確保できず内陸ルートも西夏との対立で確保しづらい為に日本からの海上ルートに求めたという背景。日本のみならず東南アジアやペルシア方面にも海上からの確保ルートがあった辺りは壮大。2020/11/10
kenitirokikuti
13
図書館にて。2009年刊行。以前読んだときには全く産業史が頭に入ってなかったことを痛感した。唐の頃から19世紀半ばまでは黒色火薬の時代である。原料は木炭と硝石と硫黄であり、硝石は1820年頃にチリで大規模な鉱床が発見されるまでは大量生産できず、産地も限られていた。硫黄も火山帯に偏在しており、少なくとも宋の版図では硝石は得られたが硫黄はまれであった。やがて無煙火薬(ニトロのたぐい)が標準となり、石炭も石油に置き換わり、ハーバーボッシュ法(空中元素固定装置的なもの)も発明され、黒色火薬は下火となっている2023/01/18
じょあん
6
日本史リブレットですが、硫黄の世界史といった趣。従来あまり注目されなかった日本の輸出品としての硫黄について、それが貴金属類より重要だったのではないかとの検証から入り、中国のみならず、西アジアにまで記述は及ぶ。必読の一冊。2024/05/30
竜王五代の人
5
地下資源が世界のどこにあるかは地学とは切り離せないけど、火山という分かりやすいものと結びついた硫黄が、構造上火山が存在しえない大陸中国(宋)へと流れていく様子(それもかなりの主力商品として)が描かれた良作。そういうのがあったという定性的なものだけでなく、どれくらいの量が運ばれて加工されて消費されたかという定量的な面にも目を配られているのが良い。2022/11/13
宣和堂
4
日本から中国大陸への交易品でよく上がる硫黄に着目した本。『蒙古襲来』を読んでいたら言及していたので、先に読んでみた。日宋交易では船のバラストとしては黄金などはまだ産出量が大したことが無いので、むしろ量としては硫黄の方が多かったのでは無いかと言うのが論旨。宋代以降火薬の発明によってそれまで医薬品として流通していた硫黄の需要が増し、流通量が増えたとする。今まであまり注目されることが無かった交易品にスポットを当てた事には目から鱗…なのだけど…2015/01/17