内容説明
日本に現存する古代の石碑・石塔はわずかに一八基、いずれも貴重な遺産であり文化財であるが、それらを歴史資料として取り扱うのは意外に難しい。真偽の検証から改竄の有無の確認、建立した人物やその目的の探索まで、細心の考察と大胆な推察とが必要とされる。そして何よりも、建立された場所や人びととの関わりに眼を据えなくてはならない。「日本三古碑」を含む六基の石碑・石塔が現存する東国は、それを試みるのに相応しい場所といえるであろう。その手始めとして、個々の石碑・石塔の特色をみていくなかで全体に通じる要素を探り出し、それを古代東国の歴史像解明への糸口にする、本書ではそのような読み解き方をしてみたい。
目次
石碑から東国を考える
1 古代石碑の見方と考え方
2 日本古代の石碑
3 山上碑―古墳から地方寺院へ
4 金井沢碑―知識結縁の石文
5 多胡碑―建郡の〓(ぼう)示と口示
6 山上多重塔―衆生済度の石塔
7 那須国造碑―評督韋提をしのぶ
8 多賀城碑―蝦夷と坂東を結ぶ
東国への歴史認識
著者等紹介
前沢和之[マエザワカズユキ]
1946年生まれ。関西学院大学大学院文学研究科修士課程修了。専攻、日本古代史、博物館学。現在、館林市役所市史編さんセンター専門委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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坂津
4
那須国造碑・多胡碑・多賀城碑の「日本三古碑」を含めた古代東国の石碑について、律令政府の蝦夷政策の観点から詳説したリブレット。日本三古碑以外では、山上古墳に隣接しており本来の場所に残存する全国唯一の墓碑としても貴重な山上碑、多胡碑・山上碑と合わせて「上野三碑」と称される金井沢碑、仏教的理念に基づき建立された山上多重塔が取り上げられている。本書の冒頭では、日本に先行する中国・朝鮮半島の石碑についても簡潔に紹介した上で、石碑研究は地域との関わりを踏まえることが基本だとしており、親切な構成となっている。2022/10/11
明鈴
1
日本三大古碑とその他の石碑・石塔3基の、あわせて6基が紹介されている。著者は群馬県立歴史博物館開館の準備にも携わってる先生で、少し踏み込んだ難しい内容を、非常に分かりやすく丁寧に説明されていて、専門知識がなくてもジックリ楽しめる内容です。6基のうち4基は群馬県。あとは栃木県と宮城県に各1基存在する。古代東国の生き生きとした様子を脳裏に浮かべることが出来ます。2014/05/31
星規夫
0
東国生まれとしては何となく親近感が湧く内容。2015/11/12
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