内容説明
江戸幕府の崩壊はいつ頃から始まったのか。幕藩体制自体がはらむ矛盾、度重なる天変地異、激変する経済情勢、海を越えてやってきた脅威、力をつけた庶民。これらに対応して、幕藩体制を守るために行なわれた改革のうちの代表的なものが三大改革といわれる。しかし、三大改革という理解は正しいのだろうか。「内憂」と「外患」の視点から、三大改革を見なおすことによって、江戸幕府の崩れゆく様子を眺めてみたい。
目次
1 善政悪政交替史観と三大改革
2 享保の改革
3 寛政の改革
4 天保の改革
5 悪政の政治構造
著者等紹介
藤田覚[フジタサトル]
1946年生まれ。東北大学大学院博士課程修了。専攻、日本近世史。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授
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感想・レビュー
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新田新一
11
享保、寛政、天保という江戸時代の改革について書いた本です。この3つの改革を通して見ることで、江戸幕府が徐々に衰退していったことをよく分かります。享保と寛政の改革はある程度成功して、幕府の権力基盤を強化し、財政を立て直すことに成功します。しかし、天保の改革の頃になると、異国の外圧が強くなり、財政の健全化も成功しません。学生の頃は歴史はただ暗記するだけの勉強でした。でも、このような本を読むと、歴史は経済や政治、外交などが複雑に絡み合って、じっくり向き合えば、様々なことを学べるものであることが分かります。2023/10/16
圓子
5
悪政があって対抗策としての善政が敷かれるという理解は勝者の理論みたいなもの。幕政の転換点はいつ・どこなのか。そもそも幕藩制・江戸幕府の政治機構上陥りやすい問題とは。公儀の意味とは。2021/03/29
sovereigncountr
2
江戸時代の三代改革を中心に据え、幕府の統治機構の本質に迫ろうとする野心的な概説書。2023/03/12
MUNEKAZ
2
ワンセットにされがちな享保、寛政、天保の改革だが、享保が幕藩体制の発展に伴う制度的な矛盾の解消にあったのに対し、後者2つは幕藩体制そのものの「危機」への対処にあり、立ち位置に違いがあるとする。とくに寛政と天保では打ちこわしや一揆、藩の独立性の増大といった内政面以外にも、度重なる異国船の侵入やアヘン戦争の衝撃など増大する外圧への対応があったというのは面白い。強引な引き締め策も幕府の「強さ」を示す必要があってのことであった。2017/08/08
pinkie
1
江戸の三大改革と一般に言われる、享保・寛政・天保の改革は、並列されているもののそれぞれが異なる意味合いをもつもの。その意味合いを授業で体得させるためには、江戸幕府の財政基盤や幕府機構をしっかりと理解させないといけない。江戸時代の授業づくりの参考になった。2018/01/27