内容説明
日本の伝統的な都市建築の代表は町屋である。町屋は古代から近代にかけて都市的な文脈のなかで生成・発展し、洗練されていった。接道性と沿道性によって特徴づけられる町屋は、わが国の都市の成長とつねに不可分な関係にあった。しかし一九六〇年代以降の都市の急速な現代化は町屋を都市から駆逐することによって進行したといえる。いまわれわれは町屋にかわる適切な都市建築のタイプを生まないまま、現代都市の圧倒的な駆動力に身をまかせている。本書は古代から現代までを射程にいれ、町屋の展開過程を京都・大坂・江戸に代表される巨大都市の都市史と絡めて跡づけるとともに、都市における建築のあるべき姿の一端を探ろうとするものである。
目次
1 町屋とはなにか
2 町屋の形成―古代から中世へ
3 京都と町屋―中世から近世へ
4 大坂と町屋―中世から近世へ
5 巨大都市江戸と町屋
6 町屋の近代
著者等紹介
伊藤毅[イトウタケシ]
1952年生まれ。東京大学大学院博士課程修了(工学博士)。専攻、都市建築史。東京大学大学院工学系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こずえ
1
日本史における町屋がどのように形成されたかを知りたい人に最初の1冊としておすすめできる。どちらかというと都市工学系かな
chang_ume
1
「町屋」とは何か。その歴史的源流について、古代都城から中世都市への変遷=店舗の路面展開という従来の「商業史」的理解に反論を加えています。門や塀といった「境界装置」を町屋の源流とする仮説。主に「洛中洛外図屏風」や「年中行事絵巻」など絵画史料からの検討ですが、「門・塀からの町屋化」の変遷はややイメージしにくい。そんな具体的事例があるのかな。あまりピンときません。一方で、空間と建築の関係からの都市理解にはなるほどと。通文化的な視点が導かれます。その他、京都・大坂・江戸の地域性についても参考に。2017/07/24
まさあき
1
町民の居住スペースに通風と採光などの自然条件を等しく享受できる空間があったかを確認できたのが収穫。2014/08/10
k_samukawa
1
町屋好きに薦めたい一書。所々難しいが、町屋の起源と発展、そして完成までが歴史的裏付けとともに示される労作。町屋の建築物としての完成は明治以降だというのは面白い。でも、個人的なことを言えば、土蔵造りじゃない方が好みかな。2010/08/01
May
0
レポートのためにざっと読み。町屋以外のビルディングタイプについて他の本で補完しながら読むと見通しが良くなると思う。2013/02/15