内容説明
英雄か、極悪人か?皇帝ナポレオンにまつわる、さまざまな記憶。その記憶が、19世紀のフランス社会を動かしていた。パリの街角に刻印された「ナポレオンの記憶」それは、シャンゼリゼをはさんで建つ二つの凱旋門と、かつてナポレオン博物館と呼ばれていたルーヴル、そして、セーヌ河畔に眠るナポレオンの遺骸…。街角が奏でるこれら不動の記憶と、民衆の心性のなかで転変する記憶。記憶=伝説は、人びとに何をもたらしたのか。
目次
1 希代の英雄か?
2 希代の悪党か?
3 皇帝の逆襲
4 暴走するモニュメント
5 伝説の彼方への歩き方
著者等紹介
杉本淑彦[スギモトヨシヒコ]
1955年生まれ。現在、京都大学大学院文学研究科教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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蛇の婿
11
ナポレオンの持つ良かれ悪しかれ強烈な求心力をめぐっての、19世紀の政治家たちの政権獲得へのイメージ操作の顛末、という内容に読めました。ただわりと、客観的な分析よりも結論ありきで書いている部分が目立つような気がします…まぁその…杉本淑彦さん、「京都大学の教授」な時点でお察し、という論調があちこちにちらほら。…最後の章なんか杉本さん自身がナポレオン伝説に絡めて自分の思想へのシンパ獲得のためにいろいろイメージ操作してるんだもんなぁ…こういう本に自分の思想を書くなとは言いませんがね、なんだかなぁ…2015/03/03
ジュンジュン
10
19世紀フランス、民衆の願望(自由と平等の擁護、社会変革の実践)が、ナポレオンを魔法の名前へと変えていく。七月王政や第二帝政が体制維持に利用するも、あえなく破綻。現状への不満が伝説を生み出したのだから。今度は対独復讐に燃える第三共和制が、軍事的英雄として再生させる。再びフランスで不満が充満した時、新たな仮面をつけたナポレオンが立ち現れるのだろうか?今もその時を待つように、ヴァンドームの円柱の頂きから、ナポレオン像がパリを睥睨している。2021/10/23
Annette1
3
第一帝政から第一次世界大戦期の第三共和政に至るまで、時の為政者たちが自身の政権の安定のために、ナポレオンの栄光と悪行の記憶をいかに利用してきたかを明らかにしていく本。 個人的にはシャルリー・エブド社の惨劇の際に、フランスの風刺画の歴史はフランス革命以来の伝統で……といった説明をよく目にしたため、数点取り上げられていた復古王政期や七月王政期の風刺画が特に興味深かった(想定外のタイムリー!)。 ただ、筆者の視点があまりに現代の価値観にとらわれ過ぎているきらいがあるように感じられ、そこは少し残念。2015/02/13
水無月十六(ニール・フィレル)
2
フランス革命を教育実習で取り扱ったのでその関連で読書。英雄か極悪人か。ナポレオン伝説がナポレオン時代を経て、19世紀フランスでどのように扱われ、どのような影響をもたらしていたのかについて書かれた本。モニュメントで語られる史実がその裏の惨禍を覆い隠し、第一次大戦を引き止める声をかき消させたなど興味深い指摘がなされていた。言われてみれば現代の価値観で語られている箇所もあるが、記憶というものが歴史の中でどう扱われ、何を隠し、何を伝えてきたのかという視点から歴史を見るというのも面白いなと思えた。2016/06/20
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