目次
第1章 二〇一一年政変の経緯(各国事例の概観;二〇一一年政変に含まれない事例 ほか)
第2章 民主化の史的背景(民主化の系譜;各国の状況 ほか)
第3章 現状への視角(二〇一一年政変の意義;世俗と宗教の対立 ほか)
第4章 民主化の評価と課題(民主化プロセスの「波」;エジプトは典型か、例外か ほか)
著者等紹介
松本弘[マツモトヒロシ]
1960年生まれ。英マンチェスター大学文学部中東学科博士課程修了。Ph.D.取得。専攻:エジプト近代史、イエメン地域研究、中東の民主化。現在、大東文化大学国際関係学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご singoito2
7
明治以降の仏教と日本画の歴史の本の次はアラブの政治的混乱の本。日本は欧米列強の暴力の元、国体護持の一点で団結して頑張った結果、内戦は短期終結したけれど、15年戦争と国際的孤立化によって国そのものを滅ぼしてしまった。一方、アラブ諸国はIMFや世界銀行の力を借りて近代化、世俗化を目指す一握りの金持ちと、その権力奪取を狙うイスラム政党と、さらにはその中から生まれた過激派が貧しい民衆を扇動しながら社会全体を流動化させている、と読みました。要は民主的な「分配」が問題、という本書の結論は首肯できるものでした。2024/08/20
ドウ
1
初めて読んだ「アラブの春(本文中では2011年政変)」についての総論。民主化プロセスには「波」が存在するという観点を提示し、過去の事例を検討する。そして、1989年頃にも起きた民主化運動が上からの政治制度改革だった一方、2011年のものは下からの改革要求であったとする。しかし世俗と宗教の対立、イスラーム過激派の変質、エスニック紛争への陥穽等の要因から混乱や衝突が引き起こされたことを示す。「イスラームこそ解決」と唱えるイスラーム主義者への不信感の指摘が興味深かった。2016/01/09