内容説明
今日最大のイスラーム復興運動のひとつである、ムスリム同胞団。草の根の社会活動を主とする穏健派のかれらの活動から、現代イスラーム世界を考える。
目次
イスラーム原理主義とイスラーム復興
第1章 ムスリム同胞団誕生前夜のエジプト
第2章 ムスリム同胞団の誕生
第3章 バンナー暗殺と「冬の時代」
第4章 ムスリム同胞団の復活
第5章 新時代のムスリム同胞団
第6章 アラブ世界のムスリム同胞団
著者等紹介
横田貴之[ヨコタタカユキ]
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。専攻、中東地域研究、中東現代政治。現在、(財)日本国際問題研究所研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
27
潮流というより源流とした方が良かったんじゃないの?な1冊。たぶん、現代のすべてのその手の団体の源流に当たると言ってもいいムスリム同胞団の歴史とその影響。エジプトのある意味ゆるい社会的背景を考えるとだからこその同胞団だったのかな?という気もしたり。例の革命で首相を出したと思ったら軍政に取って代わられたあたりは当然入ってません(笑)。でも確かにこれぐらいだよね、同胞団のこと書いた日本語の本て。2016/11/12
サアベドラ
12
誕生(1928年)から執筆当時(2009年)までのムスリム同胞団の歩みを略述。関連団体であるパレスチナのハマースについての記述もあり。ムスリム同胞団を単独で扱った日本語の本はおそらくこれぐらいしかない。なので同団体に興味がある人は必読だが、問題点もいくつか。一つは著者の視点が同胞団に寄り過ぎていて客観性に欠ける点。二つ目は分析が甘く、たとえば同団体がなぜエジプト社会で受け入れられたかの記述が不十分である点。三つ目はアラブの春の記述がない点(これは刊行年的に仕方ないけど)。より良い本の出版が望まれる。2013/05/23
阿呆った(旧・ことうら)
11
オスマン帝国崩壊後、イギリスの支配下にあったエジプトにおいて、伝統的なイスラムの制度は解体されました。王政も廃止された20世紀前半の大衆文化の中で、『ムスリム同胞団』は生まれました。『イスラム原理主義=イスラムの復興』と置き換えることができるようです。『ジハード』はかならずしもテロを指しているわけではありません。テロや虐殺に対する批判はありますが、イスラムを体系的にとらえるには、欧州より受けたムスリムの仕打ちや、弾圧されても生き残り祖国復興を願ったムスリム同胞団の意見も知るべきだと思いました。2015/08/22
うえ
5
エジプトの代表的な二つの急進派●1イスラーム集団「イスラーム法に基づく統治を行わない者は不信仰者である…エジプト政府はイスラーム法による統治を行っていない、不信仰のエジプト政府打倒は義務」打倒の為、政府に外貨収入をもたらす観光客を狙う●2ジハード団「92年にイスラーム集団の観光客襲撃戦術に同調」「カリフ制施行はムスリムの義務であるが、まずイスラーム国家が樹立される必要がある…権力との一切の妥協を否定…少数精鋭の軍事行動・クーデターを重視」●同胞団はあくまでも穏健な中道派「そもそもイスラームは中道にある」2015/03/17
ドウ
2
エジプトのムスリム同胞団の研究者の方による概説書。ムスリム同胞団が登場する背景から、創立者であるハサン・バンナーの思想や、パレスチナの同胞団系組織でこの時期第一党となったことが話題を呼んだパレスチナのハマースにいたるまで、ムスリム同胞団の歴史を理解することができる。導入の部分が読者に語りかけるような文体で読みやすい。バンナーが社会のイスラーム化には言葉を尽くしたものの、その当然の帰結として政治のイスラーム化を捉えていた(が故にその手段を明示していなかった)ことが、ムルシ政権の失敗につながったのかな、と。2015/11/26