出版社内容情報
フランス革命の年として意識される1789年に、世界各地はどのような状況であり、人々の意識は何に向けられていたのだろうか。ロシアの毛皮商人から東南アジアの海賊まで、世界各地でみられた政治的自由・経済的自由を求める動きを当時の資料にあたりながら追う。
島田 竜登[シマダ リュウト]
編集
太田 淳[オオタ ジュン]
著・文・その他
内容説明
自由を求める動きが、めまぐるしく世界を駆け巡る18世紀を、全地球的な視点で眺める。
目次
総論 自由を求める時代
1章 近代への転換点であるフランス革命
2章 毛皮が結ぶ太平洋世界
3章 東南アジアの海賊と「華人の世紀」
4章 スコットランドの自由貿易運動
5章 インド洋西海域と大西洋における奴隷制・交易廃絶の展開
著者等紹介
島田竜登[シマダリュウト]
1972年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程退学、Ph.D.(ライデン大学)。専攻は南・東南アジア史、アジア経済史、グローバル・ヒストリー。東京大学大学院人文社会系研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
akky本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サアベドラ
20
同時代から世界を眺める「歴史の転換期」シリーズ第8巻(刊行順では3冊目)。本書がカバーするのは18世紀。近世後期にあたり、大西洋の両側で一連の革命が進行する一方、東アジア諸国は繁栄を謳歌していた時期でもある。特に清朝は経済成長著しく、本書では直接取り上げられていないものの、第2章のロシアのシベリア征服や第3章の東南アジアの経済活性化にそれを見て取ることができる(前者は毛皮を、後者はナマコなどを中国向けに輸出していた)。他にはヨーロッパの奴隷廃絶運動がインド洋の奴隷交易に与えた影響を論じた第5章が興味深い。2019/02/18
崩紫サロメ
18
18世紀を扱った巻であるが、長らく1789年、つまりフランス革命の年は「長い19世紀」として捉えられ、18世紀は否定すべきアンシャンレジームとされてきた。しかし、18世紀は世界の一体化が進展した時代で、世界貿易の担い手の変化があった時代である。アジア貿易におけるオランダ東インド会社の独占の衰退、イギリス系自由貿易商人の参入、またアジア貿易にはロシア商人、アメリカ商人が参入する。更には中国商人の東南アジア進出などの点に注目すべきとする。2021/02/10
ピオリーヌ
10
このシリーズは既存の歴史概説書ではあまり見ない地域が登場するのが良い。「毛皮が結ぶ太平洋世界」「東南アジアの海賊と【華人の世紀】」「スコットランドの自由貿易運動」等。東南アジアの海賊について。海賊とはあくまでオランダ東インド会社側からの認識であり、筆者曰く、東インド会社のオランダ人職員たちは、自分達の貿易がライバルとの競争に後れをとっている場合、そのライバルを海賊を呼んだという。オランダ東インド会社の残した見解を採用してきたのが、比較的最近までの歴史研究であり、2021/08/19
MUNEKAZ
10
「1789年」「自由」というタイトルでフランス革命が軸かと思いきや、それは1章だけでさらっと終わり、ロシアの太平洋進出と毛皮貿易、東南アジア島嶼部の海賊、イギリス東インド会社の特許廃止と「自由貿易」がテーマの論集。どれもあまり一般書で触れることのない内容だらけで興味深いし、個別の論集でグローバルヒストリーを描くという編者の思いも伝わってくる。終章にある世界の一体化が進む中では啓蒙主義や革命の高邁な理念で誰かが「自由」になっても、その代わりに別の誰かが「不自由」になっていくという指摘が重い。2018/09/11
ウォリン
5
世界の一体化のはしりは大航海時代でも19世紀でもない、という強い主張が感じられる本だった。ローカルな歴史がグローバル・ヒストリーへとつながる。歴史初学者たる自分にもその息吹は感じられた。2018/09/30