出版社内容情報
1348年前後はユーラシア大陸全域が寒冷化した。こうした気候不順は自然災害(洪水など)を引き起こし、各地の生産活動(とくに農業)に打撃を与えた。さらに、栄養不足が疫病の蔓延を助長し、生活に困窮する農民の暴動や反乱を招いた。これら災害・飢饉・戦争・人口減少は、人々を生存危機へと追いやり、既存の体制の土台を掘り崩した。本巻では、気候不順に由来する生存危機を人々がどのように認識し、いかなる克服の試みを重ねていったかという点に着目し、渦中の人々による危機打開の模索の現場を、その成否を含めて論じる。また同時に、「体制(システム)の転換」という点で、とくに中央ユーラシアにまたがるモンゴル帝国の崩壊局面に光を当て、「崩壊」という歴史の転換の現場をビビッドに描く。
内容説明
複合する災害のなか人々はどう生きたか。「いま」だからこそ共感できる歴史の転換点。1348年その時日本は―鎌倉幕府が滅んで室町幕府が成立しますが、まもなく南北朝の動乱期を迎えました。14世紀半ばの日本の気候も寒冷期にあり農業生産力は低下しましたが、商業流通の活発化によって大きな飢饉は抑制されていました。
目次
総論 気候不順と生存危機
1章 中東社会とペスト禍・自然災害(ペストの大流行と社会;自然災害;農村と都市の社会的危機;死の日常化とイスラーム信仰の変容)
2章 十四世紀ヨーロッパのペスト(ヨーロッパにおける一三四八年;天変地異と社会不安;学識層におけるペスト原因論;ペストへの対処と医療実践)
3章 モンゴル帝国の覇権と解体過程、そのインパクト(モンゴル帝国のユーラシア統合とその支配構造;モンゴル政権の解体とその影響;十四世紀の長期変動とモンゴル覇権のインパクト)
4章 元明交替の底流(崩壊の兆し;開発と挫折;冬の到来;とだえぬ流れ)
補論 東南アジアの十四世紀と気候不順(カンボジア、アンコール朝の解体と気候不順;十四世紀の大変動;気候変動は東南アジアに何をもたらしたのか)
著者等紹介
千葉敏之[チバトシユキ]
1967年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。専攻ヨーロッパ中世史。東京外国語大学総合国際学研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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