内容説明
20世紀のイギリスを代表する政治家チャーチルは、植民地支配が拡大する帝国主義の時代の開始とともに生まれ、脱植民地化の時代に植民地が独立していくなかで世を去った。ジャーナリストとして植民地戦争に臨んだ若い日から、彼はその生涯を通じて、世界最大の支配地域をもったイギリス帝国を守っていくことを重視した。本書は、2度にわたる首相時代を含む曲折に富んだ彼の一生を、帝国との関連に焦点をあてて描いていく。
目次
多くの顔をもつ男
1 帝国主義者の誕生
2 政治家としての台頭
3 帝国の変容に抗して
4 それでも帝国は解体した
著者等紹介
木畑洋一[キバタヨウイチ]
1946年生まれ。東京大学大学院国際関係論専攻博士課程中退。専攻、国際関係史・イギリス帝国史。現在、成城大学法学部教授・東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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S.Mori
23
チャーチルの不屈の精神や文章家としての実績は尊敬できますが、政治家としては頑固で保守的な人物だったことが分かります。一生を通じて大英帝国の利権を守ることに手を尽くしました。その姿勢を支えたのはアフリカやアジアの人々は劣っているという歪んだ信念です。このような信念は現在でも温存され、欧米諸国が他の地域の利権を手に入れる時の口実の一つになっているはずです。その意味で、本書は現代の世界情勢のひずみを考えるきっかけになります。2020/09/23
ジュンジュン
6
とても100ページでは描ききれない巨人チャーチルを収めるために、本書では「帝国主義」すなわち「植民地支配の盛衰」との関連に重点を置く。ただ、通読して特にそれを強く意識することはなかった。たぶん、終生”頑固な帝国主義”という哲学を持ち続け、人生の至る所にそれが顔を出すからだろう。その信念ゆえ、彼は何にでも反対する。おかげでドイツには勝ったが、それ以外ではすべて負けた。←ちょっと言い過ぎかな?2020/09/19
hk
6
1874年に生を受け1965年に他界したウェンストン・チャーチル。彼の一生は大英帝国の没落と共に歩んだと云っても過言ではない。ドイツ帝国の猛追にさらされて尻に火のついたブリテンの舵取り役を担い、WW2には辛勝したもののインド植民地を失う。そして1955年に政治の第一線から退くと、すかさずナーセル革命が起こりブリテンは掌中の玉であるスエズ運河までも失って、パクスアメリカーナの時代が到来した。 英帝国主義の屋台骨を騙し騙し支え続けてきた男は、ブリテンによるパクスの終焉をどんな思いで見つめていたのであろうか?2016/04/21
バルジ
5
副題の通り「イギリス帝国」を軸としてチャーチルを描いた一冊。チャーチル評伝でありがちなリーダーシップの称揚や政治家としての評価は本書には無い。イギリス帝国とともに生き帝国の終焉とともに逝った一人の帝国主義者としてのチャーチルを描く。インドやアフリカを「進歩」させるためにイギリスの支配を正当化し、時に現地住民を野蛮人扱いする姿は典型的な帝国主義者の姿である。偉大な政治指導者にもこうした影に近い一面があることを知って損は無いだろう。2019/09/29
たみき/FLUFFY
5
要点をわかりやすくまとめられている。注釈もその言葉が出てきたページに掲載されているので、途中でウェブの海へ行ったきりになることもない(笑) チャーチルは、「世界における『イギリス帝国』」をひたすら守りたかったわけで、その行動や判断基準が、極端に言ってしまうとほぼそれに繋がる。ポジティブに言えばブレてはいないが、その栄枯盛衰をリアルに見届けた人でもあると思う。 WW2の著書作成に助力した歴史家ウィリアム・ディーキンが、WW2時にSOEに所属していて、パラシュート降下でユーゴへ行ったというのも興味深い。2018/03/22
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