内容説明
ド・ゴールは、戦争の30年(1914~44)と繁栄の30年(1944~73)を生きた軍人にして政治家である。この時代のフランスは激動の歴史を刻んでいる。第一次世界大戦、経済恐慌に苦しんだ30年代、第二次世界大戦とフランス解放の戦い、アルジェリアの独立と第五共和政の誕生、68年の「五月革命」など、その時々の重要な事件にド・ゴールは関与していた。本書の目的は、「ド・ゴールとその時代」を描くことである。
目次
戦争の30年から繁栄の30年へ
1 軍人ド・ゴール
2 英雄ド・ゴール
3 政治家ド・ゴール
4 大統領ド・ゴール
著者等紹介
渡辺和行[ワタナベカズユキ]
1952年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(法学)。専攻、近現代フランス史。現在、奈良女子大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamatoshiuruhashi
47
ド・ゴールの簡易な伝記であるが、ツボはしっかり抑えられている。第一次大戦から第二次大戦までの軍人としてのあり方、自分がフランスであるという強烈な自意識と国家意識を持った行動。ドイツ第三帝国のフランスへの支配から脱出した後は、戦う軍人であると同時に自身の描くフランスを作りあげる政治家ともなり、第二次大戦後は名実ともに政治家である。そのド・ゴールの一生を作った欧州のパワーの変遷を非常に的確に分かりやすく書かれている。この流れを理解することは今日の欧州情勢、世界情勢を理解する大きな助けとなる。2021/09/23
古谷任三郎
7
空港名にもなっているフランスの軍人・政治家の評伝。「かつての大国から中級国家に転落したフランスの統一と国家の威信の回復こそ、ド・ゴールがめざしたものであり」(p.49)、生涯をかけて「フランスの偉大さ」の回復に力を注いだ。米・英とは一線を画し、第三世界や東欧諸国の接近などの、「このような全方位外交は、ヨーロッパ大陸におけるフランスの地位の確立と超大国アメリカからの自立路線から生じた。国益を根幹にすえた柔軟なリアリズムないしプラグマティズムが」(p.79)、ド・ゴールにはあった。傑出したリーダーと言える。2020/08/17
Fumitaka
4
ペタンが本の「代作」を依頼したらド・ゴールの方は「自作」として発表しちゃって関係が悪くなった(pp. 16-7)って事件が面白い。この自己顕示欲と大国意識が結果的に世界史上の役割と結びついている点や、パルチザンの中での勢力圏争いや連合国内でひたすら自陣営の地位を追求していく姿勢はスターリンとかを思わせなくもない。一貫性と根性は世界史的人物によく見られる特徴である。師匠のペタンとは結局仲違いするが、しかし大国意識を「国家」に最大の価値を置くことで守ろうとしていた点はド・ゴールも共通しているように見える。2023/05/03
バルジ
3
副題の「偉大さへの意志」を軸にその強烈な個性によって軍人から国家指導者へと昇華するド・ゴールの姿が描かれる。本書を読んで何よりも印象深いのは、ド・ゴール自身の過剰とも言える祖国フランスとの同化姿勢。まさに「朕は国家なり」を体現するような国家との同一化を図り、自身の権威がフランスの威厳ひいては偉大さへ直結するという強い自負心を持つ。近代の国家指導者の中でこれほどの人物はいないのではないか。ドゴール曰く「フランスは偉大さなくしてはフランスたりえない」。このフランスの偉大さを追求する潮流は今もなお消えていない。2020/03/12
中島直人
2
(図書館)読了2021/01/30