内容説明
第一次世界大戦後の国際連盟創設の主役をになったアメリカ大統領ウィルソンは、どのような人物だったのだろうか。有名大学の学長から、わずか2年の州知事の経験のみで大統領になった人物は、ウィルソン以外にはいない。このようなことがなぜ実現したのだろうか。一方では、大統領在任中に再婚したり、脳卒中に倒れてしばらくは事実上職務を遂行できなかったこともある。ともあれ、ウィルソンはアメリカが世界の大国となるうえで一定の役割をはたした大統領の一人といえるだろう。
目次
ウィルソンの功績
1 学者をめざして
2 学長、州知事そして大統領へ
3 第一次世界大戦参戦への道
4 ヴェルサイユ講和条約の成功と失敗
著者等紹介
長沼秀世[ナガヌマヒデヨ]
1937年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専攻、アメリカ社会経済史。現在、津田塾大学名誉教授。博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
12
ウィルソン大統領の業績を述べた本です。学術的な本なので面白く読めるわけではありません。それでも教科書的な知識から一歩踏み込んだ歴史の理解ができるようになる好著です。ウィルソンの頃には労働者の権利がそれなりに守られていたことが一番興味深かったです。反トラスト法の制定がその例です。しかし、このようなウィルソンの努力は完全に実を結ぶことなく、ロックフェラーなどの巨大企業がアメリカの実権を握ります。ウィルソンには理想主義的なところがあったそうです。彼の理想が生かされなかった点にアメリカの今の悲劇があります。2019/11/09
MUNEKAZ
11
このシリーズは、一つの視点に拘ってその人物の特徴を描き出すものと、人物の生涯をとにかくコンパクトにまとめたもののの2種類に大別できるが、コレは後者の典型。国際連盟の提唱者ばかりが注目されるが、南部の保守的な地域の出身で人種問題については冷淡であったことや、現在も続く反トラスト法や連邦準備制度の創設など、ウィルソンの事績を大まかに知るには適している。また大学学長時代や州知事時代に取り組んだ改革にも触れており、彼が常に改革者・理想主義者であったこともうかがえる。2019/11/16
佐藤丈宗
2
国際連盟の提唱者として世界史の教科書にも必ず名前が出てるウッドロー・ウィルソン。本書でも政治家時代の彼の足跡に重点が置かれている。しかしながら彼の政治家としてのキャリアは54歳で州知事に就任したことにはじまる(翌年には大統領に就任)。現在も残っている反トラスト法、連邦取引委員会法や銀行改革としてつくった連邦銀行法といった経済改革を一会期中に達成した業績はあまり知られていない。国際連盟の提唱者であることばかりが注目されている大統領の足跡をたどる一冊。2016/07/15
ダージリン
2
南北戦争の状況や、第一次大戦へのアメリカの関わり方などは興味深かった。ウィルソンは政治経験が浅く、知事を少しやっただけで大統領になったとは知らなかった。それにしてもアメリカは国際連盟に加盟すべきだったように思う。共和党に阻止され無念だったであろう。ウィルソンは良い意味で学者らしい理想主義者だったように思えた。2014/04/29
ふみあき
0
本人の事績だけではなく、約100頁という紙数で歴史的背景も丁寧に解説してある。ウッドロー・ウィルソンと言えば、副題の通り「国際連盟の提唱者」で、妥協なき「宣教師外交」を展開した理想主義者のイメージだか、もともとは南部出身の保守的な学者で、人種差別の解消や女性参政権の付与にも消極的だった。大統領になってからも第一次大戦時に反戦活動を弾圧し、社会主義者を投獄したりしている。2020/11/29
-
- 電子書籍
- 筑摩書房 図書目録2025