内容説明
西欧化に向けて大きく舵を切り、帝政ロシアの礎をきずいたピョートル大帝は、自らを「国家の召使」と自覚する「近代人」であった。だが彼はいかなる法の制約も受けることのない専制君主であり、改革は大きな犠牲をともなった。サンクト・ペテルブルクは改革のシンボルであるが、伝統的なモスクワの人々の心性と大きく乖離していたのである。本書では大帝の諸改革をとおして人間ピョートルに肉迫することにしよう。
目次
ピョートル大帝の「革命」
1 若きピョートル帝
2 戦争と軍隊、そして財源
3 サンクト・ペテルブルク
4 皇太子アレクセイ事件
著者等紹介
土肥恒之[ドヒツネユキ]
1947年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専攻、ロシア社会史、史学史。現在、一橋大学名誉教授、博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
102
ピョートル大帝の西欧化政策ついて書いた本。西洋史は複雑で込み入っているが、この本はポイントを絞っているので読みやすい。政治や軍事を学ぶために大帝自らヨーロッパに出かけたというエピソードにはびっくりした。徳川家の将軍がヨーロッパに行くようなものだと思う。イギリスが特にお気に入りだったとか。共感できる人物とは言い難いが、ロシアの近代化のためには必要な人だったのだろう。2014/03/06
MUNEKAZ
15
ピョートル大帝の行った改革をコンパクトに知れる一冊。ピョートルが西欧から影響を受けて、ロシアを近代化させたのは事実だとしても、それを可能にしたのは、皇帝と一握りの寵臣が何万という農奴を支配する体制があったからというのは大事な指摘。ピョートルの生涯はそれこそ「革命児信長」的なノリで持ち上げることが可能かもしれないが、父祖から受け継いだ後進的な「遺産」がその背景にあることを忘れてはいけない。あと何でも自分で決めたいのか、帝位継承のルールを皇帝の恣意に任せる形で曖昧したのは、後世によくなかったんじゃないのかな。2024/01/09
バルジ
3
自ら造船を学ぶために船大工とまでなった「異能」の皇帝ピョートルの簡便な評伝。彼が行った施策とその後のロシアを規定した「近代」をコンパクトに纏める。岩倉使節団を思われる大使節団を率い国家の近代化に励むその姿は正に「開明」君主そのものだが、その開明政策を支えたのが農奴制と専制体制というのはいかにも皮肉。このロシアの「近代」の二面性はピョートル大帝以後のロシア史に通底する「古層」と言っても良いだろう。また開明政策を「体制化」せんとする中での模索は、開発独裁国家の政治体制維持政策にも似た趣きがある。2025/01/05
ソノダケン
3
1709年のポルタヴァの戦いのあと、ドイツの哲学者ライプニッツは「ロシアは北方のトルコになる」と述べた。予言は的中した。的中しすぎなほど。ロシアがかつてトルコと比較されてたのが、いまでは実感しづらい。2016/06/16
中島直人
1
(図書館)読了2022/04/12