内容説明
スペインのフェリペ2世は「太陽の沈まぬ帝国」に君臨し、「地球だけでは足りない」と豪語した。しかしその支配の在り方は、近年の歴史学において「複合君主政」と称されるように、帝国に包摂された諸王国・諸領邦が王権のもとに緩やかに統合されたものだった。この統合を可能にするためにフェリペは、「カトリック君主国」の国王たることを前面に打ち出したが、このことは宗教改革と多くの齟齬を生んだ。フェリペは、生涯を通じてそうした軋轢に苦しんだ。
目次
「南の悪魔」
1 カトリック王朝国家の君主への道
2 スペイン国王としての統治
3 一五六八年の危機
4 勝利のとき
5 無敵艦隊敗北から晩年
著者等紹介
立石博高[タテイシヒロタカ]
1951年生まれ。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。専攻、スペイン近代史。東京外国語大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新田新一
33
スペインのフェリペ2世の伝記。絶対的な権力を持っていた王の足跡が詳細に描かれています。100ページ程度の本なので読みやすいのですが、内容が込み入っており、頭が混乱してきます。ヨーロッパの歴史は各国の利害が絡み合った複雑なものだと改めて思いました。フェリペ2世はキリスト教を統治の要にしており、権力と結びついた宗教の恐ろしさを感じます。これは今の時代も同じです。権力が衰え、自分の子供たちのことを心配する晩年の姿が一番心に残りました。2025/01/11
崩紫サロメ
21
17世紀以降、スペイン・カトリック王国の政治的地位の中でヴォルテールなどから侮蔑の対象となっていったフェリペ2世像の歪みを見直し、その「複合君主政」を再評価する。スペイン・ハプスブルク家によって統治される諸王国はそれぞれ独自の政体を保持しつつ王権によって緩やかに統合されていたにすぎなかったということをポルトガル・アラゴンなどの例から考察している。近代の愛国的な歴史叙述とは異なる、王権に従属する人的ネットワークに基づく統治のあり方が描かれている。2021/04/12
MUNEKAZ
17
フェリペ2世のコンパクトな評伝。所謂スペインの「黒い伝説」による評価を見直し、イメージの修正を図っている。カトリックの普及を至上とするのではなく、スペイン・ハプスブルク家の利益を第一に考える現実的な部分を指摘。また「スペイン王」という現代的な捉え方でなく、カスティーリャ、アラゴン、ポルトガルといった複数の王国をそれぞれに治める「複合君主政」としてその統治を説明する。総じて父から受け継いだものを守り、次代に託そうとした真面目な王という印象。ただ統治の無理がたたり、批判が噴き出す中での死は少々もの悲しい。2022/01/31
ピオリーヌ
15
スペインにおけるもっとも著名な君主の一人であるフェリペ二世。「太陽の沈まぬ帝国」に君臨したが、その歴史的評価は興味深い。カトリック君主国とも評されたスペイン君主国だが、1581年にオラニエ公ウィレムの刊行した「弁明の書」を嚆矢として、「黒い伝説」と呼ばれることになるフェリペ二世弾劾が長く続き、20世紀までその君主像に歪みを齎すことになったという。「書類王」と呼ばれたフェリペ二世。文書による伝達を重視し、答申を丹念に読んで決定を下したという。「もう夜の十時だが、食事を済ませていない。疲れ切ってしまった」2022/04/30
ジュンジュン
9
近年歴史学においては、スペイン帝国を「複合君主制」と定義するらしい。各王国や地域が王権のもと緩やかに統合されていたにすぎず、それぞれが独自の体制を維持している状態。フェリベ2世が紐帯の礎石としたのが「カトリック」。だが、時は16世紀後半、宗教改革の嵐と新大陸の富が充溢する時代。彼の生涯は、大嵐に揺らぶられる無敵艦隊を、新大陸の銀で必死に補修する、そんな一生だった。2023/06/17
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