内容説明
王安石の断行した改革は大きな成果を得たが、南宋以後、その改革は否定され、彼の人物像すら歪められていった。あまりに時代を先取りした点や、大商人や地主の利害に抵触した点が、否定や歪曲の原因とされた。そうした側面は否定できないものの、当時の人たちの言説に即し、問題を捉え直してみると、そこには是か非か以前の、国家や社会の在り方、さらには人間観をめぐる対立が浮かび上がってくるのではなかろうか。
目次
王安石の知名度
1 生い立ちと生涯
2 新法諸政策と新法改革の目的
3 王安石と新法に対する批判意見
4 王安石の国家論と輿論
5 王安石評価の変遷
著者等紹介
小林義廣[コバヤシヨシヒロ]
1950年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。専攻は中国宋代史、宗族。現在、東海大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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電羊齋
5
王安石の新法の宋代史における位置づけ、王安石の生涯、新法の内容、新法への批判意見、王安石が行った異論の排除、王安石の持つ輿論観と国家像、そしてその後の王安石と新法への歴史的評価の変遷をコンパクトにまとめてあり、王安石を知る上での良き入門書として読める。個人的に興味深かったのは、王安石と新法に反対した司馬光は対立関係にあったものの、強い皇帝権力をいただく国家像を志向していたという点で共通していたという著者の指摘。また、注や表により、当時の人物や官職について丁寧な説明がされており、読んでいて非常に助かった。2014/06/21
nori_y
4
『宋詩概説』王安石の章を読んで、彼の推し進めた新法とやらは庶民には良い政策に見えるのに何でそんなにも反対されたのかと不思議でしょうがなかった。これに反対する高級官僚は既得権益にしがみついてるだけなんでないか、え、蘇軾もか?と勝手にショックを受けてみたり…本書を読んで、そう一筋縄では行かない複雑な事情が察せられたが。新法のみならず、王安石自身の性格がどうも皆さんと相入れなかったんだろうなあ。何となく、神宗はもうちょっと彼を上手く用いれたんじゃないかとも思える(素人感想)2018/10/11
いもせやま
3
宋代官僚史が専門である小林義廣氏の一般向けの一冊。中国伝統社会の感覚からすれば、異端とされる大政治家 王安石。彼の生涯と政治・国家間を、北宋代の状況をふまえながら説明していく。表を使って政治家間の関係の説明はありがたい。改革を断行するためにも、台諌を遠ざけ、「人情」や国民の「世論」をばっさり切り捨てた王安石の行動は、問題があるといわれても仕方がないと思われる。しかし、その後の中国社会が異民族に支配されていった過程を考えると、王安石の改革が成功していれば…と思ってしまうのは、歴史ヲタの妄言だろうか。2014/04/11
佐藤丈宗
2
王安石といえば新法であり、クローズアップされるのは旧法派との政治闘争ばかりである。結果的には挫折に終わった彼の改革。その歴史的な意味を、彼に先立つ「慶暦の改革」という前奏曲とともに論じることで浮彫りしようと試みる。王安石のライバルといえば司馬光。実は二人の国家観自体は似通っており、新法派vs旧法派は必ずしも進歩派vs守旧派という構図では捉えきれないことがわかる。2017/09/19
シノッツォ
1
王安石の生涯や、新法について、また国家観などがコンパクトにまとまっていたので読みやすかった。途中、人物についての説明が補足されているので確認しながら読んでいくといった感じ。巻末に、参考文献なども記されているので最初に本書を読んで、参考文献などで知識を深めていこうと思った。今はこんなとこかなと思う。2017/03/20