内容説明
一騎馬遊牧民に過ぎなかった匈奴は、前3世紀後半、冒頓単于があらわれると瞬く間に北アジア諸族を征服して覇権を樹立した。冒頓はクーデタで父を殺し権力を奪取したという暗い過去をもつ。ふつうであれば悪逆非道な人物と思われがちだが、彼は匈奴の民に勇者として迎えられている。本書はその人気の秘密をさぐり、冒頓がいかにして匈奴遊牧国家を強大化し、南の秦・漢中国王朝と対抗したのか、その姿を描き出してみたい。
目次
モンゴル高原
1 匈奴と中国
2 冒頓の雄飛
3 白登山の戦い
4 匈奴遊牧国家の成立
5 匈奴遊牧国家の性格
著者等紹介
沢田勲[サワダイサオ]
1942年生まれ。明治大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専攻、北アジア古代史。現在、金沢星稜大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ピオリーヌ
14
100頁に満たない分量ながら、内容は読み応えあり。史記の記述でよく知られる冒頓単于の雄飛のエピソードから、攣鞮氏が代々単于位を独占し、后妃の地位である閼氏は、呼衍氏の娘がほぼ継いだという内容までバランスよく触れられる。呼延灼、欒廷玉と水滸伝に登場するが、関連はあるのだろうか。同著者の『匈奴―古代遊牧国家の興亡 (東方選書)』は図書館で見かけたが未だ手にしたことがない。読んでみよう。2020/09/30
電羊齋
8
冒頓単于の生涯、そして匈奴遊牧国家の組織、匈奴社会の様相について、文献史料及び考古資料を元にコンパクトにまとめている。本書は「遊牧国家」というものを知る上で、良い入門書だと思う。著者が指摘するように、匈奴が生み出した組織・機構・諸制度はその後の内陸アジアの多くの遊牧国家にも受け継がれているからだ。2015/10/19
ジュンジュン
7
やはりというべきか、当然と考えるべきか、冒頓単于の事は2,3のエピソード(父親殺しなど)を除いてほとんど分からない。今後も劇的な大発見でもない限り、情報量は増える事はないだろう。本書の構成も中国側から見た匈奴の歴史になっている。2020/02/18
さとうしん
7
冒頓単于の生涯を追いつつ匈奴に関する基本事項も押さえており、このシリーズとしては理想的な構成。個人的には、終盤で言及されていた、匈奴が用いた文字未満の記号というのが気になるが…2015/09/14
韓信
5
冒頓単于の生涯を軸に、多種族連合の遊牧国家として「匈奴」が成立するまでを描いた概説書。冒頓単于の評伝というよりは「匈奴政権成立史」といった内容。学生時代に沢田先生の講義を聴講していたので懐かしく読了。新出史料も乏しいし、特別新知見もないのだが、ゆるやかな部族連合政権としての構造をコンパクトにまとめていて解りやすく、匈奴のことを知りたい人が最初に手にとる入門書としては、東方選書の『匈奴』よりも本書の方がおすすめできる。2021/02/28