内容説明
仁とは、克己によって、人を愛し思いやる心のあり方である。本書では、孔子が生きた春秋時代へと降り立ち、孔子に直接問い尋ねる気持ちになって、その仁を歴史的に考察した。
目次
孔子とその史料状況
1 生涯と理想
2 春秋という時代
3 戦士としての孔子
4 軍礼とその存在基盤
5 仁の誕生
著者等紹介
高木智見[タカギサトミ]
1955年生まれ。名古屋大学大学院博士課程修了。現在、山口大学人文学部教授。専攻は中国先秦文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
16
孔子に対するイメージが変わる一冊。孔子の思想の核を成す「仁」の淵源を、春秋時代の「軍礼」に求め、動乱の時代に生きた一人の戦士として描き出す。武人として名声のあった孔子の父や、武器を取ることに躊躇しなかった当時の知識人たちを紹介することで、孔子の思想的な背景を明らかにしている。鍛錬を怠らず「己に打克つ強さが必要」と説く孔子は、それまで私が思っていた格言おじさん的な像を打ち砕く、覚悟の決まった姿でなかなか鮮烈。また春秋→戦国の間で起こった戦争に対する倫理観の変化も、興味深かった。2021/04/08
Toska
6
漠然と文治主義の親玉のように思っていた孔子が、意外や武人としての自意識から自らの思想をスタートさせていたという大変面白い話。そういや、中島敦の『弟子』でも孔子が卓越した武力を見せる場面があったっけ。「宋襄の仁」が高く評価された当時の戦争観も興味深かった。あくまでも正々堂々と、戦争というよりは近代スポーツに似た味わい。これは互いの価値観が一致してこそ可能な戦争のスタイルなんでしょうね。2021/05/31
錢知溫 qiánzhīwēn
4
”武”の觀點から孔子とその弟子や管仲・晏嬰・叔向・子産ら春秋時代の著名人を執えなおした興趣に滿ちた一册。中國の歷史に興味關心を抱いた十代のわかものや、小說等の娯樂作品で春秋時代に親しんでいる方が「はじめて學者の書いた著作を讀む」のにお勸めの一册。中國人硏究者の名前と著作を多く出してくれているのも、うれしい一點であった。春秋時代は戰士國家であったという指摘はまことに興味深い。希臘と比較したらおもしろいのではないだろうか?2022/06/17
夜桜銀次
3
孔子の唱えた「仁」の由来に迫る話です。孔子の人間像や春秋時代に対する今までのイメージと全く異なるもので面白かったです。 春秋戦国とひとくくりの印象がありましたが、春秋から戦国に至る時期は、様々な面で大転換の時期だったことも驚きでした(詳しくは読んでからのお楽しみ) 薄くて(100ページ未満)、図版も多く、高校生でも読めると思います。 古代中国(歴史、思想)に興味をもったら、いつかぜひ読んでみてください!!! 三国志やキングダムなどとはひと味違う世界が見えると思います!2025/05/01
佐藤丈宗
3
戦争の時代を生きた孔子。彼は戦士としての修練から克己する力を養い、そこから儒教が根本となす「仁」にたどり着いたとする視点は斬新。これまで孔子に関する本をいくつか読んでいても、新たな発見を与えてくれる一冊。 当時は国君、貴族が戦士として戦争を担い、日頃の鍛錬によって己を高め、正々堂々と戦う作法…軍礼があった。この軍礼に着目することで、孔子の言動に歴史的背景を加え、その思想をより立体的に描こうと試みた意欲作といえよう。2016/03/05