内容説明
古代ギリシアの思想家たちは何を残したのだろうか。哲学思想にかぎらず、さまざまなところにあらわれる思想はまちがいなく彼らの残した大きな遺産である。さらに思考することの大事さと楽しみも、彼らは伝え残している。この書で、彼らの思想の中味がどのようなものであったかを語るとともに、どのような状況下で思想がつくられたかを考えた。アンティフォンとソクラテスを生んだアテナイの知の状況と、ソクラテス的思考が長く残ったゆえんが示されよう。
目次
謎の思想家
1 叙事詩と抒情詩の世界
2 哲学者とソロン
3 前五世紀のアテナイ
4 アンティフォン
5 ソクラテス
著者等紹介
高畠純夫[タカバタケスミオ]
1954年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。専攻、古代ギリシア史。現在、東洋大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
5
主にギリシア思想家アンティフォンを扱う興味深い小著。ソクラテスも扱うが「アンティフォンのほうはソクラテスの実情を知れば、あまり彼に関心をもたなくなったのではなかろうか。ソクラテスの教えは実際の法廷弁論にも政治弁論にも役立たないようだからである。実際の弁論は…いつ聴衆の感情に火がつき怒声罵声が飛び交うことになるかわからない…民衆の心理に精通したアンティフォンだからこそ教えられることはあったのであり、それが彼の強みだったろう。それに対しソクラテスはそうしたことに何の関心もはらわなかった」という所は面白い。2021/09/23
ブルーツ・リー
3
「古代ギリシャの思想家」で本を書かせても、こうも内容は変わってくるものなのだな、と思った。 ソクラテスやプラトン、アリストテレスを全面に押し出す本が多い中、この本は比較的、相対的というか、優れた思想家とされる人物のみにスポットを当てるのではなく、プラトンから「ソフィスト」の烙印を押されたような人や、無名に近いような人物まで含めて、描かれている。 「哲学」という分野にこだわらず、古代ギリシャの歴史だとか、叙事詩だとか、神話の部分にまで入り込み、哲学書として難しく読む、というより、物語のように読める1冊。2021/05/07
カラス
3
謎の思想家アンティフォンとソクラテスに半分のページが割かれているが、本の内容は、彼らの思想と人生を解説するだけにとどまらず、古代ギリシアの思想家たちのおかれた状況や雰囲気を伝える内容となっており、ただ単なる思想の解説書ではない。ソフィストはどういう人たちか、そして、上記の二人がともに社会の中でどんな立ち位置を占めていたのかを解説した本である。古代ギリシアにおける知識人たちの雰囲気や、社会における立ち位置がちょっとだけわかったような気がする。なかなか面白かった。2019/05/31
ユーディット
3
いわゆるソクラテス、プラトン、アリストテレスを中心に思想を解説するというより、知られざるソフィストたちから時代をよみがえらせる形で興味深い。2014/12/23