内容説明
今から五〇〇年以上の時をへだてて、アジアとヨーロッパがまじわるところにその帝国は存在した。首都コンスタンティノープルの旧称ビザンティウムにちなみ、ビザンツ帝国と今日、呼ばれているその国家は、古代ローマ帝国の正統の後継者としての気概を保ちながら、危機に直面するたびに柔軟に国家機構の刷新をかさね、一千年以上にわたって東地中海に光彩を放ちつづけた。伝統と革新、栄光と哀惜が交錯する千年帝国の歴史を読み解いていこう。
目次
1 東方のローマ帝国
2 存亡をかけた戦い
3 皇帝と貴族の世紀
4 家産国家体制への転換
5 解体するビザンツ世界
著者等紹介
根津由喜夫[ネズユキオ]
1961年生まれ。金沢大学法文学部史学科卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。専攻、ビザンツ帝国史。現在、金沢大学人間社会学域歴史文化学系准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
15
コンスタンティノープル建設から滅亡までの東ローマ帝国(ビザンツ帝国、中世ローマ帝国とも)の歴史を社会構造の変化と合わせて概説。一般向けには井上浩二『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫)のほうが人物中心でとっつきやすいかもしれないが、こちらのほうが帝国1000年の社会全体の変化を追いやすく、また2008年刊行時の最新の研究が反映されている。理由はよく知らないけど、東ローマ帝国は日本人の研究者が伝統的に多い。そのせいもあってか、ウィキペディア日本語版の「東ローマ帝国」の記事はやけに充実している。2013/04/07
組織液
14
リブレットなので非常にコンパクトですが、刊行当時の最新研究を反映させたテマ制や皇帝教皇主義の解説などは参考になりました。ビザンツ史の中だとあまりいいように書かれていないヴェネツィア、ピサ、ジェノバなども、コムネノス朝ビザンツの経済活動を活性化する役割を果たしていたようですね。簡単に読めますが、ビザンツ社会の変化に焦点を当てているので、初心者には『生き残った帝国ビザンティン』の方が良いかもしれません。2020/12/05
ワタシ空想生命体
5
ビザンツ帝国がギリシア化したのも、西ローマ帝国の滅亡も、テマ制やプロノイア制の導入、東西教会分裂も当時はモニュメンタルなイベントとしては認識されていなかった。9世紀のビザンツ人にとってヘロドトスは「専制国家ペルシアに対して自由を守ったギリシアの戦いを記した歴史家」として認識されていたのではなく、「古代ペルシアの大王の事績と彼らに対するギリシアの反乱を記録した史家」であったというのは書物が作者のものではなく読者の手にゆだねれていることがわかる。2014/02/07
rbyawa
5
そもそもこのコンスタンティノープル(この古名がビザンティウムでビザンツ帝国と他称されたそうな)に「ローマ帝国」の首都が移ってきた頃は確かにまだローマ帝国の印象と一致してるのに、いつの間にやらギリシャ化、そうこうしている間に西ローマ皇帝位が廃位され、自他共に独自の道を歩んで行くものの、さて、明確な区分は、と言われると実はわからないし。東西教会の分裂というのもそれ自体は事実としてあるものの、なら一体いつから変質したか、というのもよくわからない。という事情がこの本を読むとよくわかります(待て)。2010/04/03
はら坊
4
本邦における、ビザンツ帝国に関するもっともコンパクトな通史といえる本。 「リブレット」というレーベルの性格上、コンパクトであると同時に頭注が豊富についているので、理解を深めやすくなっている。 「皇帝教皇主義」、テマ制など、世界史の教科書において太字で登場する用語についても、その実際について丁寧に解説がなされている。 同著者の『図説 ビザンツ帝国』(河出書房新社、2011年)も併せて読むと、本書の内容への理解がさらに深まると思う。非常におすすめ!2019/12/26