内容説明
ヨーロッパで生まれた科学的な医学は、それまで治療不可能とされていたさまざまな疾病にたいする有効な対応策を提示した。その効力はヨーロッパ社会だけではなく、世界中で認められ、受容されていった。この近代医学をわれわれは西洋医学と呼んできた。しかし、欧米社会では科学的な医学に批判的な、さまざまなオルタナティブ医療も人びとのあいだで根強い人気を獲得してきた。本書では、近代医学の展開とオルタナティブ医療信奉者の活動をあわせてみてゆくことによって、ヨーロッパに併存する多様な価値観に光をあててゆく。
目次
近代医学とオルタナティブ医療
1 近代医学の発展
2 医業の専門職化
3 二つのオルタナティブ医療
4 民間人によるオルタナティブ医療運動
著者等紹介
服部伸[ハットリオサム]
1960年生まれ。同志社大学文学部卒業。同志社大学大学院文学研究科博士課程(後期)中退。専攻、近代ドイツ医療社会史。現在、同志社大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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うえ
4
半分は自然療法についての歴史。「自然療法士専門学校で養成された自然療法士は、自然療法の治療師のなかでは当面はごく少数にすぎなかった。しかしナチス期になるとあらゆる治療師はハイルプラクティカーの名のもとに統制されるとともに、国家によって承認された資格となった。そのさい、モデルとなったのは、従来からあった自然療法士資格である。新たに創設されたハイルプラクティカー資格は、戦後の西ドイツに継承され、今日では自然療法、ホメオパシーをはじめとするさまざまなオルタナティブ医療の治療を担っている」2015/03/12
ジャケット君
2
ドイツを背景にした医療社会史。ヨーロッパの既成の思弁的医療に対抗して科学的、論理的な近代医学が発展した。それまでの医学とは瀉血を代表とするような未発展な医学だったが経験を重視した医学によって広範に発展する。解剖学、衛生学(産褥熱の話は既視感があっておもろい)、麻酔学など、西洋医学の原点だった。それに付随して教育における大学カリキュラムや、国民の疾病保険など社会的側面も変遷がある。そして更に近代医学の発展した形がホメオパシー医学である。東洋医学を彷彿とさせる内容であり、西洋にも民間療法として存在した。2024/08/06
Omata Junichi
1
「科学的」な医療の成立過程を端的にまとめた本。読みやすくて、ざっくり流れを知るのにとても良い良書だと思う。近代以前の医師が教養主義的な知識を求められたのに対し、近代の医師が求められた知識が実学中心になっているというのは、医師は職人なんだなということをこんなご時世だからこそ思うところ。メディアに現れる健康増進の情報や私たちが「健康を維持しよう」とするときの発想は、オルタナティブ医療の発想とすごく近しいような気がして、これはきっと相対化して見る必要があるんだなと感じる。著者はオルタナティブ医療に懐疑的なのか?2020/10/22
quinutax
1
サクッと近代医学がわかる。ホメオパシーと自然療法をオルタナティブ医療としてかなり頁数割いているのが面白い。魔の山のサナトリウムで山の冷気に当たりつつベットで毛布に包まってたのも一種のオルタナ療法だね。2017/06/16
星規夫
1
小冊子戦術第二十五弾。西洋における近代医学の発展とドイツにおけるその普及の経緯、そして、それに対する、ホメオパシーや自然療法などのオルタナティブ医療の動きが描かれている。自分は医学の知識がさっぱりなので何とも言えないけれど、上記の非正統(近代)派の医学や東洋医学は、西洋近代医学によって完全に否定されうるものなのか、と不思議には思う。人体って地上に降りた神秘の泉、神の住む星ですもんね。嘘です。まあ、やっぱり近代医学は偉大だと思う。良くも悪くも。2012/08/24
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