内容説明
戦乱に明け暮れた近世のヨーロッパ。軍事力の主体となってそれらの戦争を戦ったのは、傭兵であった。彼ら傭兵について、われわれはどの程度知っているだろうか。掠奪などの狼藉に明け暮れて、人々から恐れ蔑まれるだけの存在だったのだろうか。そもそも彼らはどのような社会層から生み出され、軍隊の中でどのような生活をし、農民や都市民とどのような関係をとりもったのだろうか。いまだにその多くが歴史の闇に覆われている傭兵の生活世界に注目し、近世ヨーロッパの軍隊と社会を考えること、それが本書のねらいである。
目次
歴史学の一分野としての軍事史
三十年戦争時代の傭兵軍
傭兵たちの生活世界
常備軍の時代
著者等紹介
鈴木直志[スズキタダシ]
1967年生まれ。中央大学文学部史学科卒業。中央大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専攻、ドイツ近世史。現在、桐蔭横浜大学法学部助教授
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感想・レビュー
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りー
24
傭兵は古代ギリシャ以来ある職ですが、この本では最もその集団が活躍した30年戦争とその前後を取り上げています。人物でいうと、ヴァレンシュタインや、ティリーあたり。日本の室町後期~戦国時代の足軽と比較してみると面白い。あれほど激しい宗教戦争を繰り広げながら、傭兵部隊の内部では宗教が問われなかったというのが興味深かった。また、ヨーロッパ諸国の常備軍は、各国が抱える傭兵部隊を母体として生まれたというのにも、へぇ~と思いました。2021/07/22
らっそ
12
戦争は経済活動っていうことや経済的徴兵的など、今もそれほど違わない。軍隊の中の多重下請け・中間摂取の構造は、現在日本の製造業、建設業や物流業と同じようだ2020/10/21
なつきネコ@小学校に入学した化け猫
9
ヨーロッパ史では、マイナーだが、重要な歴史区分、三十年戦争を以後の傭兵の話。この時代の庶民、下流民が仕事がなくなり、傭兵になっていく。面白いのは日本史では聞かない海保商人みたいな、軍隊に付き従い商売をするような人や、家畜番、占い師、護符売りとか、売春婦や子供までいたとは。末期には軍隊の半分が彼らだとは、確かに障害物と言われてもしょうがないな。しかし、傭兵と常備軍に変わる中でも内実は変わらず、傭兵時代の中隊経営と変わらなかった。百ページ足らずで、この濃さは素晴らしい良資料。2018/04/20
海星梨
6
リブレットで勉強した気になろうキャンペーン。傭兵の終焉から近代的な常備軍となるまで。傭兵とか海賊とかを扱う人特有の強引な論展開や推論はあるけど、まぁリブレットだから読めるよね。常備軍の時代になって宿舎ができ、大工作業などをギルドを通さず、兵士が市民へ提供していたとか、そこから結婚まで繋がったとか、個々人に想像が広がる事情が紹介されていて良かった。2024/04/08
本とフルート
4
傭兵という職業は、現代の日本において目にすることがない。しかし、彼らは近世のヨーロッパにかけて世界史の形成に重要な役割を果たした人々だった。そんな彼らの生活は、なかなかに興味深い。掠奪など、今の感覚からすれば受け入れ難いことも、当時の価値観を通すとまた違って見えてきた。2020/12/13
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