内容説明
「宗教改革」といえば、普通、ルターやカルヴァンの名があげられ、イギリス国教会の成立などと合わせて、十六世紀前半の歴史的事件として取り扱われることが多い。しかし実際は、宗教改革は十七世紀半ばまで続く長期的闘いであった。しかもそこで闘っていたのはプロテスタントとカトリックだけではない。出現しつつあった主権国家同士、また主権国家と教会が、自らの生存をかけて闘いを繰り広げていたのである。宗教改革の世俗的側面に眼を向け、その思想的基盤や文化とのかかわりを明らかにして、宗教改革の全体像に迫る。
目次
宗教改革への視点
1 宗教改革と国際政治
2 宗教改革の思想的基盤
3 宗教改革と主権国家
4 宗教改革と民衆文化
5 周辺地域での宗教改革
6 カトリック宗教改革
7 宗教改革の再評価
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とうゆ
14
◯宗教改革。それは強大な権力と化していたカトリック協会に挑んだ、プロテスタントの戦い。この認識は正しいが、それが宗教戦争の全てではない。ヨーロッパ諸国は近代より、中央集権化による主権国家の道へと進んだ。その時に障害となるのが、カトリック権力だったのである。そのため、プロテスタントは国家権力と手を結び、カトリックの強烈な弾圧に耐え、生き残ることが出来た。宗教改革は、政治的な改革と表裏一体なのである。2015/07/31
ジュンジュン
5
漠然としたイメージしかなかった宗教改革を見事にデッサンしてくれる。六項目の章立ては、100ページのリブレットシリーズでは欲張りすぎかと思われたが、見事に「進歩と反動」というステレオタイプから解放してくれる。2020/01/26
MUNEKAZ
5
宗教改革についてのコンパクトなまとめ。プロテスタントの隆盛について、その教義や革新性ではなく、当時ヨーロッパで勃興しつつあった国民国家との親和性が大きな役割を果たしたとする見方は面白い。信仰を「良心の問題」とし、世俗の事柄と考えないのは、確かにカトリックに対抗する国民国家にとっては都合の良いものだったであろう。2017/03/09
samandabadra
4
薄くともワンテーマで非常に勉強になった一冊。宗教改革の時代はルターのころに始まり、1648年三十年戦争の終わりまでの期間を指すこと、その理由に関して納得。宗教改革とルネッサンスはセットで語られることが多いが、両方が間逆の状況の中で成立しているという説明に納得。さらに、プロテスタントとカトリックでは、植民地において、その植民者に対して、「人間と見たかどうか」という議論に関しても非常に納得。2015/07/29
Yuzupon
4
参考文献として買ったはずが、使わないまま積ん読化していたのを消化。教科書的な宗教改革解釈に全力で反抗してる一冊だった。視点が地味に面白い。プロテスタントは進歩でもなければ、カトリックは反動でもない。ハプスブルク家とヴァロワ家に挟まれてふよふよする宗教改革史。二世紀にわたる改革抗争の結果、巡り巡って非キリスト圏にとっては少なからずろくでもない結果をもたらしたという締めに静かに同意(ーー;)2013/03/05
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