内容説明
今世紀にはいってから、敦煌やトゥルファンをはじめ、西域と呼ばれる地域の各地で、おびただしい数にのぼる古文書が発見された。これらの多くは漢文文書であり、その分析をつうじ、従来、史書からは知ることのできなかった中国史上の諸制度の細部や社会のあり方、さらには人びとの生活の一端も明らかになりつつある。またこのような成果をふまえながら、新しい中国の国家像や社会像を築く試みも進められている。本書では、その一部を紹介。
目次
一点の文書から
西域文書の発見
西域文書への接近
納税証明書を探る
制度と社会
交易と宗教
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
62
ロマンをかきたてられる西域・中央アジアの文書だが、その中には納税を証明する領収書もあり、現実に引き戻されてがっかりさせられるかもしれない。しかし史書・典籍でない分、生の行政・制度の実態をうかがえるわけで、興味はつきない。唐の時代には律令制での支配を受けるが、実際には現地の実情に合わせざるをえず、画一的に政策を押し通すことは無理だったようだ。漢文と西域の言語を併記する文書もあり、興味深い。しかし西域での実態から中央の様子までも推定するのは、史料の性格を考えれば無理があるらしい。2020/06/22
崩紫サロメ
21
西域文書から唐の支配のあり方を読み解くものであるが、半分くらいが「文書」とは何か、「史書」との棲み分けなどを論じたもので、「史書」メインで生きている者には面白い。均田制の実施状況などについても、結局のところトゥルファンでは実施されていない、それにも関わらず唐朝は均田制の実施に固執していたことろから、「画一性、しかし柔軟な画一性こそが律令支配の本質ではないか」(p.69)とする。2021/01/20
hyena_no_papa
7
他の方の感想を見るとやはり専門畑の方が手に取る本のよう。以前、『三国志』古写本について調べた際に知ったペリオ、スタイン、ヘディンの名が出てきて懐かしい。紙と簡牘についての解説など興味深い。西域にあった高昌国や後半にはソグド人の話が出てきて、中国史が独立した歴史ジャンルではなく、周辺諸民族との関わりや西洋世界とも通じていることを実感させる。頭註や史料画像も適宜挿入されて読むものに利便と言えよう。掲示板時代に専門畑の方から教えてもらい読んだ、銭存訓『中国古代書籍史 竹帛に書す』を再読せねばと言う気にもなる。2024/06/16
竜王五代の人
5
西域文書とはどんなものか、という話が半分ほど占める。先進各国が漁ってったのでよく全容がつかめないとか、古文書あるあるだけど、再利用・再々利用(副葬品の紙細工の材料になったのは驚き)されたのを研究の材料にしているとか。統治の実際たる徴税の領収証と、班田収授の実態から中華帝国を探る。とはいえそれが九牛の一毛であることも触れている。2025/04/13
すいか
4
乾燥した気候によって保全された西域文書の分析によって1000年以上前の諸制度の運用の実体や人々の暮らしの一端が解明されるというのは驚くべきことであるし、他の出土文書がごく断片的であることを併せると、敦煌文書の貴重さが実感できる。1998年版のまま加筆訂正がなされておらず、最新の研究成果が反映されていないのは惜しい。2019/10/04
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