内容説明
純友は海賊の首領?悪逆非道の乱暴者・反体制の英雄?東シナ海へ雄飛する風雲児?本書は、このような軽薄な純友像を提供するものではありません。著者が描こうとする純友は、十世紀前半の政治的世界のなかで、自己の功績の正当な評価を要求して立ち上がり、志し半ばで倒れた、登場したばかりの一人の「武士」の痛ましい姿です。わずか八〇〇字に満たない『純友追討記』を縦糸に、豊富な政府側記録を横糸に、「史料を逆なでに読む」ことを通して、一〇〇〇年以上にわたって着せられてきた海賊の首領の濡れ衣を晴らし、純友の実像、その情念と思考と行動に迫ります。純友の思いに寄り添って、鎮魂の旅に出かけましょう。
目次
1章 はるかなる京
2章 史料を逆なでに読む―『日本紀略』承平六年六月某日条
3章 純友蜂起
4章 備前の乱と讃岐の乱
5章 激闘
6章 最期の賭け
7章 終幕
著者等紹介
下向井龍彦[シモムカイタツヒコ]
1952年生。広島大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻は奈良・平安時代史。現在、広島大学大学院教育学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どすきん
2
公家なのに武士。傍流とはいえ藤原北家に連なり、上手く立ち回れば官位は上がったと思われる純友。何が彼をそうさせたのか、良く分からない。2017/07/12
田舎っぺ狸
1
貴族政治の中から武士が登場し,その政治的な力を否応なく認めざるを得なくなってきた時代として平将門,藤原純友の二人を代表者として現されるが,そのうち,藤原純友の政治的な行動,戦いを論評している。純友ひとりがあばれるというのではなく,10世紀という時代に既に「武士」という政治的な勢力が力を持っている。そしてこれ以後は貴族の力は落ちてきて,必然的に武士が台頭するのだと言っている。2014/04/08
笛吹岬
1
藤原純友像を見直したい人には手軽な一冊。2011/12/30
naftan
0
この時代の海賊は、交易を求めた商人や職能的な海の民なんかではなくて、納税の不足分を京への運搬がてら略奪して員数を付けようとする在庁官人や官位に付随した免税特権を失った地方の有力者が自力で回収しようとしていたもの。/鎌倉あたりまで小型の舟の構造は、丸太をくり抜いて作った船首・胴・船尾と船縁の保護の角材で出来ていた。2012/08/03
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