出版社内容情報
軍事大国の経済破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失…。アメリカ覇権の揺らぎ、ロシアの動き、米中「新冷戦」。激動の国際秩序を見通すために知りたい、歴代14帝国「崩壊」の道程を第一線の歴史学・考古学者陣が読み解く。
内容説明
軍事大国の財政破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失…第一線の研究者が解く、歴史上の14帝国「崩壊」の道程。
目次
序章 帝国の崩壊をめぐって
1章 「海の民」侵入による衰退説は真実か―エジプト新王国の崩壊
2章 宮殿焼失前の城壁拡張が示唆する、近づく戦争の脅威―エーゲ文明(ミケーネ「帝国」)の崩壊
3章 「食料庫跡」が示す新たな滅亡についての仮説―ヒッタイト帝国の崩壊
4章 「世界最古の帝国」を滅ぼした四つの要因―アッシリア帝国の崩壊
5章 エジプト再征服による疲弊と「想定外」の敵―アカイメネス朝ペルシアの崩壊
6章 後継者なき「大王」の早すぎた死とヘレニズム時代の開幕―アレクサンドロス帝国の崩壊
7章 軍事大国の財政破綻と求心力の喪失―ローマ帝国の崩壊
著者等紹介
鈴木董[スズキタダシ]
1947年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。専攻はオスマン帝国史、比較史・比較文化にも深い関心を持つ。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nat
32
図書館本。世界史の知識が足りないことを痛感。難しかった。ヒッタイト帝国の崩壊の章では、ドイツなどの欧米の研究者から認められない日本人研究者の苦労が伝わってきた。また、考古学における発掘現場での地道な精査、検証の重要性も理解できた。他に印象的だったのは、アレクサンドロス帝国の崩壊の原因。アレクサンドロスが征服することには興味があったが統治することにはあまり関心がなかったこと。そして彼の早すぎた死、後継者がいなかったことなどが挙げられる。しかし、もし長生きしていたとしら、また違う歴史があったのかもしれない。2023/12/30
さとうしん
23
上巻は地中海周辺地域の古代帝国滅亡編ということになるだろうか。面白かったのは大村幸弘氏による第3章のヒッタイト編。地道な発掘作業と研究を積み重ねることで、ヒッタイトの滅亡について従来と全く異なる、小麦の生育不良による食料不足に原因があったのではないかという見解に至ったという。他の章も「海の民」の実像、アケメネス朝を征服したというより乗っ取ったという方がふさわしいアレクサンドロスなど、新たな知見が紹介されている。2022/07/02
鯖
20
カルチャーセンターでの講座を一冊にまとめた本。それぞれの章のラストに「もっと知りたい方へ」と参考文献が載っているのもありがたい。ヒッタイトの滅亡が従来の海の民によるものではなく(ヒッタイトの帝国終焉期の火災層から海の民の遺物は全く出ていない)、ヒッタイトが保有していた収穫量の多い小麦が周辺地域に広がっていき、ヒッタイトの力が相対的に落ちていったからというのが興味深い。ハプスブルクとオスマンが完全に崩壊してしまったのは、宗教と言語が寄せ集めだったからというのはなるほどな~と。下巻に続く。2023/04/07
ようはん
17
帝国と呼ばれるぐらいの強豪国の滅亡した背景は様々であるが代替わりのリスク等、急激に膨張した帝国の長期的な維持はやはり難しい。アレクサンドロス大王の帝国は大王の急死が無かったらのifはやはり気になった。2023/03/05
bapaksejahtera
11
朝日カルチャー講座の内容を編集し、上下巻に纏めた物で読み易い。学術的に定説に乏しい点にも、著者の私見が述べられる好著。帝国とは広大な版図を抱え、エスニカルにも多様な地域を政治的軍事的に包括する複雑な構造体という。この為特に帝王の存在は要しない。よってシナのように地勢的文化的に纏まった所が帝国として登場するのは満漢蒙土の連合体が構成される元以降である。前巻では埃及からローマまで主に中東以西を採上げ、最初の帝国としてアッシリアを定義する。帝国の範疇から外れるが、ヒクソスやペリシテ人に関する新説は興味を引いた。2024/08/14