出版社内容情報
皇帝、将軍、政治家、詩人、軍学者、食文化研究者――どれが真実の貌なのか?
三国時代の覇者・曹操の最新人物像を、政治・経済・軍事・思想・教養など14の気になるテーマから、最前線研究者たちが解き明かす!
内容説明
政治家、将軍、詩人、軍学者、博物学者―どれが真実の貌なのか?最前線の研究者が14のテーマから最新の人物像を解き明かす!
目次
1 歴史のなかで曹操像はどう語られてきたのか?(三国志―『三国志演義』と「正史」の曹操像はどこが違うのか?;沛国曹氏―曹操の出自はほんとうに卑しいのか?;正統論―後世、人物像はどう評価されてきたのか?;曹操高陵―曹操高陵の発掘調査から何がわかったのか?)
2 「覇者」たらしめた政治力と軍事力の源泉とは?(猛政―曹操が目指した理想の政治とはどのようなものだったのか?;青州兵―軍事面での曹操の評価はどうだったのか?;都城―曹操政権と魏王朝の都、それぞれの役割とは?;唯才主義―人材登用にどんな特徴があるのか?;異民族―どのような異民族政策をとっていたのか?;太子―後継者に望んだのはそ曹丕か曹植か?)
3 経済・文化面でどんな功績があったのか?(文学の宣揚―なぜ、文学を重視したのか?;屯田制―屯田制はなぜ成功したのか?;戸調制―時代の変革期に採用した税制政策の中身とは?;魏武四時食制―なぜ、料理本『魏武四時食制』を著したのか?)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Die-Go
43
三国志の英雄の一人、曹操を様々な観点から分析した、小論集。読みやすく新たな曹操像を提示してくれる。面白かった。★★★★☆2020/05/16
ピオリーヌ
17
2019年の刊。タイミングとしては三国志展の開催と同時期。曹操に関する研究者たちの文集であり楽しく読めた。石井仁「曹操の出自はほんとうに卑しいのか?」では史料・出土品を用い、沛国曹氏がある程度の勢力をもつ豪族であったと示されている。他も新たな知見が盛り沢山。おすすめ。ただ文集によっては主要参考文献が示されていないものもあり、そこは不満が残る。2022/02/22
はるわか
16
若き日の曹操が理想とした儒将・橋玄。曹操が行った政策の特徴「猛政」は橋玄から継承したもの。各地の富裕層、有力者層を取り組んで政権を維持した漢では官僚たちへの刑罰が有名無実化。曹操はそれを認めず、法律に基づく徹底的に厳しい統治「猛政」を選択した。軍事専従集団のルーツとなった青州兵。絶大な権限(軍事政府)を許された方面軍司令官。曹仁、夏侯淵。唯才主義による人材登用。参謀集団の中核をなす荀彧と穎川人士。曹操の唯才主義への儒教官僚側(陳羣ら)からの反撃としての九品中正法。文学の重視。屯田制。戸調制。2020/04/07
ようはん
16
ここ近年における最新の曹操研究のまとめ。橋玄といえば人物評の許劭のエピソードに絡むのと二喬の父親みたいな扱われ方してるぐらいしか知らなかったが、法を重んずる硬骨漢かつ文武両道に秀でた人で若き日の曹操に影響を与え、目指した人物であったのは意外だった。多才で知られる曹操であるが本草学にも通じ料理に関する書を書いていた事実も面白かったが、現在までに散逸してしまったのが惜しまれる。2020/01/09
ほうすう
13
形式的には○○研究の最前線を彷彿とさせる14のテーマからなる論考集。ただ目新しいものも見受けられる反面随分と無難に落ち着かせた論考があるのも事実。その中で興味深かったのは曹操高陵、「猛政」と呼ばれる橋玄の政治姿勢を継承したという曹操の政治支配の特徴、曹操の文学宣揚についての三つ。曹操が文学を持ち上げたのは儒教に対抗するためというのはずいぶんと文学が生臭く扱われたものだと驚きといささかの失望。ただ曹操が本当にそこまで意図していたのか、紙幅の制限があるのだろうがもう少し根拠を示してほしかった。広く浅くの入門書2020/06/22