出版社内容情報
松本 直子[マツモト ナオコ]
著・文・その他
内容説明
長野県木曾郡南木曾町漆畑にろくろの木地屋集落がある。良材を集め、家族みんなで山々を移動しながら生活していた木地屋が明治以降に定住した場所。山の民の暮らしぶりや心のありようは、ときにフィルターがかけられた視線にさらされてきた。前作『崖っぷちの木地屋』同様、木と向き合う職人の姿に魅せられた著者が描く、ろくろの木地屋の物語。
目次
天空の流星群のように
木曾に暮らす
出会い
「ろくろの木地屋」を訪ねて
木工芸術の民
蛇の踊りくだる山々
漆畑の工房にて
南木曾の「ろくろの木地屋」
小椋榮一のしごと
もてなし
花びら
ふたつの「ふるさと」
根っこ
隣人として
木地屋の美味しいもの
漆畑の木地屋と清内路の山ノ神
「るる」と歌えば
著者等紹介
松本直子[マツモトナオコ]
1952年東京生まれ。早稲田大学第一文学部社会学科卒業。2007年長野県上松技術専門校木材工芸科卒業後、木曾福島の木地屋村地忠太郎氏のもとで、木地づくりを学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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翔亀
39
木曾福島の<へぎの木地屋>村地忠太郎に弟子入りした著者は、南木曽の<ろくろの木地屋>小椋栄一・正幸親子に出会う。今度は弟子入りまではしないが、相変わらず思い入れたっぷりに職人の世界に没入する。<へぎ>は木を剥がす職人、<ろくろ>は回して挽く職人。ともに鋸で"断つ"ことはせず、木を"生かす"技法。刃物を使わない<へぎ>の方がより木に寄り添った技術(へぎが可能な木は限られている)のような気もするが、<ろくろ>の小椋氏は、民俗学で古代以来の「漂流民」として名高い近江・小椋谷の木地師の末裔だった。なので、前著は↓2016/10/29
壱萬参仟縁
4
貴重な職人技継承者の東京、早大出身の著者。木と共に生き抜いてきた村地忠太郎師匠の下で修行する著者。そして、実は評者は村地師匠の孫とは高校で同級生であった。南木曾の木地師の里近くには、通信制高校のヒューマンアカデミーのスクーリング授業が旧小学校校舎で展開されている。木祖村のお六櫛も登場(38ページ~)。著者は職人であることと著作物を著すという勉強家でもある。地元学の色彩も濃厚か。史書としての読み方も可能。木地屋は同じ生業同士の国境を越えての付き合いがあったという(191ページ)。技の交流があるのは事実だな。2013/01/15
たいよう
1
木地屋、木地師の話。自分たちの物語を他の人たちに伝えることなく、木曽の地で黙々と生業を続けてきた村地忠太郎さんや小椋榮一、正幸さん親子を中心として、著者がその歴史から生き方まで教えてくれる本。こういう人を伝承師と言うのかなあ。埋もれそうな物語をきちんと後世に残してくれました。「読んで良かった」と思える本。南木曽のやまとを訪ねたくなりました。2014/06/22