出版社内容情報
第一部現代日本政治の精神状況/第二部イデオロギーの政治学/第三部「政治的なるもの」とその限界。戦後思想の状況の中で、真にラディカルな論理を確立した二十論文を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobody
4
丸山の政治学者たる地位を担保するのは、古今の政治学者の著作はもちろんカント、ヘーゲル、ニーチェを読みこなし、思想史的に主体性認識が現れてきたのはいつ頃からかという問いにサラッと「まあ、後期スコラ哲学といわれるドゥンス・スコートゥスやウィリアム・オッカムあたりからだろうね」と答えられる、要するに文献渉猟能力【だけ】だ。肝腎の洞察能力たるや嗤うべき浅さで、“ジャーナリスティック政治学者”と形容するにふさわしい。なぜ知識人の担保が文献渉猟能力【だけ】になるかというと、論文の評価として受け手の血肉化は可視化できぬ2023/09/27
KAZOO
2
今の人はあまり読まないかもしれませんが、私どもの年齢のものにとっては著者の「日本の思想」と並んで政治学の必読文献の一つでありました。大判でかつまた論文集なのでとっつきにくいかもしれませんが、「超国家主義の論理と倫理」のみを読んで、その他に自分の興味のある分野の論文を読んでいく方法でも構わないと思っています。私はその他「軍国支配者の精神形態」を山本七平さんの著作を読んだ後なので再読しています。2013/04/07
mz_gk
2
丸山の本格的な政治論文にふれるのはこれが初めて。今を生きる自分から見ても感じる議論の鮮烈さを前にして、賛否関わらず戦後日本の政は治思想を長く支配した「丸山病」の存在に妙に納得してしまった。今後も紐といて思索の肥やしにしたい1冊。/ 日本ファシズムの本質は、既成事実へ屈服、権限への逃避、そして官僚精神から形作られた「無責任の体系」にあると丸山は述べる。支配者の矮小性が、日本を未曾有の戦争に追い立てたのが彼の指摘する通りの事実なのだとしたら、それはもはや悲劇を通り過ぎて喜劇だ。2012/06/06
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
1
丸山真男とは誰か。丸山は私にとって何なのか。丸山は歴史学とりわけ近現代史においてどういう意味を持つのか。自分なりの答えが出せるんだろうか。丸山の論考をもはや同時代的史料としてみるというので割り切って考える考え方は確かにあるかもしれないけれど、無視するには丸山は大きすぎて。何なんだよこの人一体。分かんない。分かる日が来るんだろうか。丸山真男に問いたい。あなたは一体誰なんだと。初めて丸山読んだときは狼狽甚だしく、橋川文三に出会ってやっと心の安心を得たものの、最近、それもどうも怪しくどうしようもない自分がいる。2012/06/08
aki
1
政治学の第一人者の骨太の論文を集めたもの。「超国家主義の論理と倫理」「日本ファシズムの思想と運動」などファシズム関係の論文は特に読み応えあり。明確に意思決定したナチスの指導者に比べ、時流に流される日本ファシズムの指導者たちの矮小性を指摘した部分では思わず笑ってしまった。安保問題では積極的に発言、講演活動なども活発に行った。安保問題関係の著述は収められておらず、この本だけでは安保に反対した理由は不明だが、著者の思想と安保反対はストレートに一致すると思えず、著者もまた時流に流されたのではないかとの疑問が。2011/08/11