出版社内容情報
〔元ナチ党員十人の思想と行動〕普通の人間が異常状況によって平然と異常行動を是認し、自らも行動に加っていく姿を、ドイツの一小村の村人たちのナチ経験から描いたレポート。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
34
大戦後まもないドイツの田舎町に滞在し、住民との対話を通して彼らがナチズムに同化していった状況を描く。2段組で活字も小さく決して読み易い本ではない。しかし、人々の声からは、長い絶望と幻滅の中でヒトラーが経済的閉塞感の打開と庶民でも国の指導者になり得るという希望に満ちた存在であったことや、全体主義の暴虐が少しずつ計画的に進行することでいつの間にか声も上げられなくなっていく不気味さがひしひしと伝わってくる。服従、そして沈黙を選択することで自らも追い込んでしまう恐怖。とても他人事では ない。2021/05/24
印度 洋一郎
4
第二次大戦後、ユダヤ系アメリカ人の研究者がドイツの田舎町に滞在して、ナチス党員だった十人の住民からの聴き取りを行った記録。仕立屋、教師、職人などなど色々な背景を持つ十人が、ナチスに入党した理由、党で何をしていたか、敗戦後振り返ってみてどう思うかをかなり率直に語っている。「不景気で就職を有利にしたかった」「結婚するために定職に就きたかった」とか現実的な理由での入党、そしてナチス時代の暮らしは「良かった」と口々に語られる。この辺に、勢力伸長の理由がありそう。反ユダヤ主義もぬけぬけと語られていて、拍子抜けする2015/06/24
ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き
3
既に鬼籍に入った恩師が言及していた本。図書館にあったので借りて読んでみる。ユダヤ系アメリカ人である著者が第2次大戦後のドイツのある町に1年間住んで元ナチ党員10名に丁寧に聞き込みを行なった記録。著者の視点が客観的ながら、眼差しが温かいためもあってか、ナチ党員=悪とは言い切れない複雑な要素がよく分かる。日本とドイツが権威主義的だとよく言われるけれど、その意味合いもよく分かった気がする。その意味でこの本に書かれたことは決して他人事ではない。古い本ながら、読み継がれるべき本だと感じた。2012/12/29
ぴぃおう
3
ナチス関連の本では一番おすすめ。文章は読みやすいから新訳で文庫版とか出してくんないかなと思う。内容はタイトルそのままだが「教授、あなたが私の立場だったらどうなさったか、教えてください」と語る元党員(もっとも当時は近所中全員がナチだったため、ごく一般的な市民とも呼べる)の言葉が現代でも古びない。2012/01/17
あきら
2
読んでいて、なんかこれって、今の日本じゃない?というのばかりだった。「有権者としての個人が国家を構成する」という言葉が出てくる。信じていたものがある日突然悪になる。自分は間違ったことはしていなかった。知らなかった。そして、言われるまま戦争に差別に破壊に突き進む。ニーメラーの詩にも出てくる。気がついたときには既に手遅れだ。そうなる前に、疑え。ヘイトスピーチを野放しにしている日本。「あんたがたはユダヤ人を、痛め付けているつもりでいるが、自分のやっていることがわかるかな?子どもらに盗みを教えているんです。」2014/03/31