出版社内容情報
〔祖型と反復〕歴史時代以前の古代伝承社会における基本的観念を「偉大なりし始源の時代」への周期的回帰の観念のもとにとらえ、歴史哲学的側面より古代心性を明らかにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
79
お気に入りの方が『ユニヴァーサル野球協会』のレビューで触れられていて、読んでみようと。宗教学者である著者の論文らしく、はしがきから理解困難で挫折しかけたけれど、本文進めると少し難易度和らぎ、何とか最後までは読んだ。1~3章は、多種の神話・宗教を引きながらの文化人類学的印象を受けた。日本の文化(祭とか稲作とか)を照らしてみると「私はこれを知っていたのだ」という感覚になる論拠が多い。4章は知識不足で理解しきれなかった。ただ、この流れでの結論がキリスト教に至るのは面白いと思った。ポール・ギャリコの小説みたいだ。2022/05/12
roughfractus02
5
天地創造は周期的であり、様々な民間伝承にその類似した祖型が認められる。著者は、起源を時間直線の最初の点とする近代的時間意識を持つ近代の人々も、周期的な時間に沿って無意識に行為している場面を前景化する。創造は脱魂の儀式での上昇運動であり、聖なる外側から宇宙を把捉し、下降して俗に戻る。この反復が生死に関する昇天の垂直性や山を聖地とする空間的象徴性を作り、「中心」としての聖域を空間化する聖都や宗教建築デザインとなる。俗から聖への上昇の困難は建築空間を螺旋化し、通過儀礼を苦痛なものとし、物語の主人公に苦難を課す。2021/07/08
Naoto
2
エリアーデの『宗教学概論』(エリアーデ著作集第1巻〜第3巻)の姉妹書に位置づけられている本書は、若きエリアーデの情熱的な試みが随所で見られる。特に、最後の章題にもなっている「歴史の恐怖」というのは、彼が抱き続けた究極的関心ではないだろうか。
kungyangyi
1
タイトルに「神話」と入っているが、内容は歴史哲学(時間秩序と歴史観の変化)がメインテーマ。このメインテーマについては、アマゾンレビューで甘井さんがよく纏めている。/心に残るのは、61−62頁の話。歴史的な出来事が人々の間で、伝承の物語となってゆく様子が示されている。/神話について言えば、ものごとの始まりについて物語る起源神話が問題にされている。定期的に行われる儀礼の中で、起源神話が再演されることで、単純文化の人々は、線的な歴史を否定し、歴史を円環的な永遠の繰り返しとして確認するという。2020/06/11
ぴぴねこ
1
神話に回帰する事で、実際の時間の意味がなくなるような気がする。大きな立場で見ればそうなんだろうけど、それだと個人の意味がない。歴史から学ぶ事も、教わる事もない…当然、発展も進化もない…なにゆえにそんな事が必要なのかがわからない。神話とは勝者の歴史ではないのか…闇に葬られた歴史がある事を忘れてはならない。必ずウラがある…神話はそれをも包含するのだろうか…。2020/02/15