出版社内容情報
〔乏しき時代の思索者〕現代思想界に広汎な神秘的影響力を持つハイデッガー哲学の秘密を探り、その徹底的批判によって学界に衝撃を与え、真の批判とは何かを教えた問題の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
9
師ハイデガーの後期哲学に対し、著者は存在論を神秘化する点を批判する。ハイデガー哲学は戦前の実存から戦後の存在に主題を「転回」したとされるが、著者はハイデガーの言語使用を注視し、戦前『存在と時間』で自己に時間性を導入して実存を問うたハイデガーが、戦後に存在を非人称主語とし、古ドイツ語を駆使してDenker(思索者)をDichter(詩作者)へと音韻的にズラしつつ哲学的批判の力を曖昧化していると批判する。著者は師の転回を、主語を位置付ける文法構造を揺るがす存在論的な問いの場面を修辞の次元で回避する、と捉える。2021/10/14