出版社内容情報
コレラは(半)乾燥帯を突き抜け、「パンデミック」となった。マラリアは「風土病」として「発見」された。北の結核には新しい治療法が試みられた。??気候・自然・文化が多様なユーラシアにおける帝国の展開が生む医学と医療。本書は、ユーラシアを俯瞰して近代帝国の医学・医療について考える視座の獲得を試みる。COVID-19のパンデミックを経験し、激しい気候変動の中に生きる私たちの現代的な問題を解決する糸口を提供することを目指す。
【目次】
凡 例
序 章 近代ユーラシアの「帝国医療」と自然・疾病・人間(宮崎千穂)
1 本書のねらいと構成
2 ユーラシアの多様な気候・自然との対峙
3 「帝国の医学」に終わりはあるのか
第Ⅰ部 一九世紀ロシア帝国の拡張と中央ユーラシア――風土病・流行病
第1章 帝国の医学地理学と風土病――ロシア領トルキスタンのマラリアを手がかりに(宮崎千穂)
1 「風土病」の時代と医学地理学
2 フェルガナ盆地の病理学
3 疾病を〈局在化〉する
4 医学地理学の記述様式――自然・人間・風土病
5 〈すべてがある〉――ヨーロッパ・カフカース・フェルガナ
6 一歩一歩確認される熱病のミアズマの三原則
7 マラリアの医学地理学はカフカースから――「フィジオグラーフィヤ」としての間欠熱の地理学
8 帝国の医学地理学をつくる「風土病」マラリア
第2章 ロシア帝国医療とチベット医学――在来知と帝国近代が織りなす緊張と併存(井上岳彦)
1 種痘の帝国史
2 チベット医学地域における痘瘡予防と在来知の担い手
3 チベット医療に熱狂するロシア
4 「オルタナティヴ医療」の生命力と近代の境界線
第Ⅱ部 インドから中央ユーラシア・ロシアへ――コレラ・パンデミック
第3章 コレラ・交易・水――インドから中央アジア・イラン、そしてロシアへ(脇村孝平)
1 コレラは、中央ユーラシアを南北に縦断したのか?
2 一九世紀におけるコレラ・パンデミックの伝播経路――陸上ルートに焦点を合わせて
3 インドから中央アジア・イラン、そしてロシアへ――近世・近代の交易ルート
4 コレラと乾燥・半乾燥地帯――水環境をめぐって
5 忘れられた交易史
第4章 第一次コレラ・パンデミックとロシア帝国――「開発原病」と「帝国医療」(畠山 禎)
1 コレラ、ペストの流行とロシア帝国
2 カスピ海沿岸への進出と「開発原病」
3 第一次コレラ・パンデミックにおける南カフカース、アストラハン
4 コレラに関する「知」の形成――調査、発生原因をめぐる議論
5 コレラ患者の治療、予防策
6 ロシア帝国の「開発原病」と「帝国医療」
第Ⅲ部 ロシア・ポーランドの結核と二〇世紀の帝国医療
第5章 第一次世界大戦期ロシア帝国のサナトリウム治療――その政治的文脈(池田嘉郎)
1 ドイツとロシア
2 開戦までの状況
3 第一次世界大戦の開始
4 サナトリウム療養の地理的拡大
5 帝国の潜在力とサナトリウム
第6章 都市を照らす「太陽」――一九二〇年代ポーランドにみる結核の光線療法(福元健之)
1 都市・環境・健康
2 光線療



