出版社内容情報
ASD・ADHD当事者の大学教員 横道誠 × ニューロダイバーシティ推進の第一人者 村中直人
「なんとなく周囲に溶けこめない」少年を描く物語とその解説を交互に読み進める
まったく新しいスタイルの発達障害本!
誰もが生きづらさを抱えにくい社会へ、私たちはたどりつくことができるだろうか。
リアルで異質な、心ざわめく発達障害論。
――
朦朧とした感覚の底から、悲しいような気持ちと安心するような気持ちとが複雑に混じりあいながら、込みあげてくる。
ミノルがいま悲しいのは、じぶんがずっと苦しんできたことは、生まれつきの障害のせいなのだとわかって、どれだけ努力しても根本的に解決できないと宣告されたからだ。
ミノルがいま安心しているのは、じぶんが苦しんできたのは、じぶんがダメな人間だからじゃなくて、ほかの子たちみたいに努力できないからじゃなくて、すべて障害のせいだったとわかったからだ。
――本文(横道)より
内容説明
「なんとなく周囲に溶けこめない」少年を描く物語とその解説を交互に読み進めるまったく新しいスタイルの発達障害本!
著者等紹介
横道誠[ヨコミチマコト]
1979年生まれ。博士(文学)(京都大学、2022年)。京都府立大学文学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かやは
13
常にカモフラージュ(偽装)マスキング(仮面づけ)をするように生きることの窮屈さ。 常に自分は他の人とは違う、劣っていると意識させられることの残酷さ。 直せるものなら直している。直せないから困っている。病院に行くことは悪いことじゃないはずのに、自分が壊れた存在のように感じてしまう。 自分が劣っていると、明確に判断されてしまうのは辛い。 何も問題ないことがデフォルトだと思うのはやめよう。 標準的人間は幻想の中だけの存在だ。 目の前の人間自身を見ることの大切さを教えてもらった。2024/03/17
🥧
2
Twitterで「まったく新しいスタイル」と話題になっていたので図書館で借りた。「海球」って知らない言葉だなとか、自分の知っている発達障害と微妙に違うけどなんだろうとか思いながら読み進めていくと、「海球」と「まったく新しい」ってそういうことか!と驚く展開だった。多数派が正義や常識を支配しない、それぞれが尊重される世界になってほしい。2025/02/11
コムラー
2
私としては、海球にせよ、地球にせよ、特別支援学級や特別支援学校は隔離政策に思えた。 「空気が読めない」という表現があるが、空気は透明なので読める訳が無い。という私は、発達障害者か? 「空気が読めない」より、「多くの人の表情などから雰囲気がつかめない」というのが適切だと思うが、一般的に「空気が読めない」と言われているから仕方無いのかも。 結局、マイノリティーが発達障害者になってしまう。多様性・ダイバーシティが大事ということか。 村中先生の解説で、事実の確定ができてよかった。 新しい形の小説というか文学2024/07/02
cape
2
フィクションのかたちを取ることで、発達障害という現象を理解しようと試みた本。「自閉」って訳語がそもそもなんかおかしくない?と家族と話していたところだったので、まさかの「キカイショー」に膝を打った。2024/03/08
ちぃ
1
当事者である横道さんにしか書けない小説。この小説に出会えてよかった。小説中に登場する言葉の選び方ひとつとっても、村中さんの説明により当事者の特性や環境などの背景を知ると、非常によく考えられたものなのだと分かる。 何となく不思議というかいくつかの違和感がありつつ読み進めていったが、そこである事実に辿りついた時にはああ、そうだったのか!と。 村中さんの解説もとても分かりやすく、新たな発見も多かった(特にASDの児童の発達傾向については驚き)この解説がなかったら、この小説の本当の面白さに気づかなかっただろう。2025/01/17