出版社内容情報
仏教を深く修めただけでなく、儒教・道教の知識にすぐれ、詩歌や書を2000以上も生み出した良寛。彼に生家を捨て、曹洞宗門とも決別する決断をさせたものは一体何だったのか。他者の救済に気を配るようになったのはいつで、帰郷へと誘ったものは何だったのか。書や詩歌の制作と仏教の実践は彼の内面でどう結びついていたのか。地位も名誉も財産も捨て果ててどのように人々に幸福を与えようと考えたのか。本著では従来の伝記類が見落としていた点を軸として洗い出し、全く新しい良寛像を描き出す。
内容説明
これまでの良寛の伝記は、少青年時代の学業に対する真摯な努力、深い学識ゆえに家業を捨てるに至った葛藤、道元の禅を深く学びつつも曹洞宗門と訣別した理由、そして越後に帰郷して乞食僧として生きるという選択、これらの実態と重要性を見逃している。本書は、良寛の詩歌を自伝的に捉えることでこれらを読み解き、江戸時代後期の厳しい格差社会・差別社会のなかで、わけへだてなく人々に寄り添い、癒し、慰め、幸福を共有した生涯を再発見する。
目次
序章 大正五年春の良寛―良寛の近代性を求めて
第1章 良寛の生い立ちと教育
第2章 失踪、放浪、出家―良寛の疾風怒涛時代
第3章 良寛の禅の修行と宗門教団
第4章 乞食僧良寛の誕生への道程
第5章 良寛が成し遂げたもの―五合庵時代を中心に
第6章 乞食僧の言葉が紡ぎ出す美の世界―乙子草庵時代の円熟
第7章 良寛のなぐさめとはげまし―島崎草庵時代からの回顧と展望
終章 良寛のおきみやげ
著者等紹介
阿部龍一[アベリュウイチ]
東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒(経済史)。ジョンズ・ホプキンス大学上級国際関係論研究所(SAIS)修士(国際関係論)。コロンビア大学宗教学部哲学修士、同大学哲学博士。現在、ハーバード大学東アジア言語文化学部教授、同大学ライシャワー日本研究所日本宗教専任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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