出版社内容情報
トランスジェンダーの人々が生きることに伴う「実感」とはどのようなものなのか?
――トランスジェンダーの一人として生きる著者と、8人のトランスジェンダーとの語り合いをつうじてこれらの問いに迫る労作。
それぞれの過去といまの体験世界を解くことで導き出された、〈雰囲気〉〈擬態〉〈器〉の3つの鍵概念からトランスジェンダーを生きるという体験に接近する。
内容説明
8人のトランスジェンダーと当事者の一人として生きる著者とが織りなす語り合い。それぞれの過去といまに触れ、その体験を解いた先に見えたものとは?体験の「質感」を色鮮やかに描き出した、トランスジェンダーに出会える書。
目次
第1部 理論編(トランスジェンダーをめぐる歴史と今;性をめぐって語られてきたこと;近年の実証的研究が明らかにしてきたこと;方法論)
第2部 事例編(性を他者との関係性から捉え直す―“雰囲気”;トランスジェンダーを生きるという体験に伴われる実感―“擬態”;トランスジェンダーの人々はどのように他者や社会とつながっていくのか―“器”;最終考察)
付録―町田なりの語り合い法手引き
著者等紹介
町田奈緒士[マチダナオト]
京都大学大学院人間・環境学研究科共生人間学専攻博士後期課程修了(博士:人間・環境学)。現在:名古屋大学男女共同参画センター特任助教。専門:発達心理学・臨床心理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K(日和)
13
人間の中にある混沌とした感情や譲ることのできない信念・原理原則とも呼べるような、言わば魂みたいなものを、対話の中で大事に言語化し、それを互いに共有し合う営みの愛しさに感じ入った。そしてそれを読み手に追体験させることを受け入れ、出版に至った著者及び当事者8名の覚悟に敬意を表したい。と同時にこの覚悟を伴った文章たちに触れ、ただ「非当事者だけど生を追体験できたかも」「自分の生を豊穣にできたかもしれない」で終わらせて良いはずがない、と強く思っている自分がいる。2022/05/30
千住林太郎
2
自身もトランスジェンダーである著者が、トランスジェンダー当事者にインタビューした学術書である。インタビューを通じてトランスジェンダーを生きる実感とはどういうことか、トランスジェンダーの方はどのように他者と関わるかを論じている。シスジェンダーである身としては、本書で語られる体験は未知の内容であり、概念は知っていても意識していなかったトランスジェンダーの生き方について考えさせられた。 理論編が難しい方は、インタビュー主体の実践編から読み進めてもいいと思う。 2022/05/02
瀬希瑞 世季子
1
精神分析や社会構造論だと三人称的な視点になってしまい、トランスジェンダーを生きる人たちの個別的体験が見えてこない。当事者の感覚を抄える現象学的なアプローチが必要とし、語り合い法からトランスジェンダーの体験を分析する。トランスジェンダーも他者と関わりながら生きる以上、トランスジェンダーが過剰に他者化されている状況は好ましくない。遠い他者としてのトランスジェンダーを身近なものとして認識する必要がある。性的マイノリティを自分が所属するチームだと捉えている当事者の話が面白かった。2022/12/09
Bevel
1
どうしたらトランスジェンダーを読み手に追体験させられるか。医学・心理学・社会学の先行研究は「一人ひとりの体験の様相」や「質感」が見えないし、調査者が「黒子」となっている(75)。採用するのはエスノメソドロジーのような手法を拡張した「語り合い法」で、主題を明らかにするという共通の目的を立てたインタビューをメタ議論で調整という感じ。「雰囲気」として性は「擬態」して暮らすが「器」(言語理解+他者)の前では自然体でいられるという感じだけど、重要なのは細部よね。エピローグで言われているように境界は薄い感じするけどな2022/07/22
-
- 洋書
- Silver King