出版社内容情報
広田弘毅(1878年から1948年)外交官・政治家。
外交官として欧米局長や駐ソ連大使などを経て、外相や首相を歴任。英米との協調を模索しつつ、中国政策をめぐって対軍部コントロールに苦慮する。東京裁判でA級戦犯として処刑された唯一の文官であり、悲劇の宰相として知られる。
内容説明
エリート外交官から首相へ。東京裁判で処刑された唯一の文官。
目次
序章 さまざまな広田弘毅像
第1章 青雲の志はどこへ向かったか
第2章 外交官としてのキャリア形成
第3章 試される「和協」外交
第4章 国家の革新に乗り出す
第5章 なぜ日中戦争の拡大を止められなかったのか
第6章 戦争の終結を求めて
第7章 歴史の審判
終章 広田弘毅とその時代
著者等紹介
井上寿一[イノウエトシカズ]
1956年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士(一橋大学)。学習院大学法学部教授。著書に『危機のなかの協調外交 日中戦争に至る対外政策の形成と展開』(山川出版社、1994年、吉田茂賞、政治研究櫻田會賞奨励賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
8
城山三郎『落日燃ゆ』のイメージが根強い広田弘毅をその城山史観から解放する手堅い評伝。本書での広田の姿は極めて現実的かつ国際協調的な外政家である。広田は玄洋社に近いが決してアジア主義者ではない。むしろ外交路線としては英米との協調を図る方だった。外相時代は次官の重光と役割分担をし、傷んだ日本外交の修復に努める。首相となっては外に現状維持、内に革新主義と政策思潮を使い分ける手練の政治家だった。しかし本書を読むと広田の欠点も見える。それは現実的なあまり「抵抗」しないという事である。これが広田の命取りとなった。2023/06/18
ぴー
4
城山氏、服部氏の書いた広田弘毅を読んでから、本書を読んでみた。両者の書いた広田とは少し異なる点で書かれていたと思う。東京裁判とはなんだったのだろう?と改めて感じる。2023/02/14
Sunlight
4
広田弘毅本は落日燃ゆ以来。 一次史料を丹念にあたりながら、淡々とした筆致で当時の様子や広田の人物像を描く筆者のスタイルはいつもながら尊敬してます。2022/06/26
Go Extreme
2
広田弘毅像: フィクションとノンフィクション 広田外交・三つの論点ー外務省での外交路線・陸軍の政治介入・日中戦争外交 青雲の志: 立身出世 思想形成ー玄洋社の存在 上京 外交官としてのキャリア形成: 出発点ー山座円次郎の影響 清国→イギリス 本省勤務 ワシントンー現実主義的な国際政治認識 情報部→欧米局 モスクワ 試される「和協」外交 国家の革新に乗り出す なぜ日中戦争の拡大を止められなかったのか 戦争の終結を求めて: 歴史の審判: 戦犯容疑者 巣鴨プリズン 東京裁判の開廷 末期の言葉 広田弘毅とその時代2024/09/02
ふら〜
2
命日に読了とは中々因果を感じる…ということは置いておいて、悲運の外交官・そして宰相と言われる広田弘毅の一代ににスポットライトを当てた本。軍部大臣現役武官制の真意、英米友好を模索し続けた姿勢、責任は責任として受け入れようとした胆力、日本史を読み返す上でも興味深い要素が詰まっている。2021/12/23