出版社内容情報
日本に遍く存在する「ブラック・アンド・ホワイト企業」を分析し、日本企業の本質を読み解く書昨今,多くのブラック企業対策本が出版され,ブラック企業の見分け方なども指南されている。だが電通をはじめブラック企業の定義に当てはまらない「優良企業」での過労死,過労自殺,長時間労働によるうつ,心疾患,精神障害などが相次いでいる。日本の大会社の大半は,ブラックな部分とホワイトな部分をあわせ持っているのである。その成立と存在条件を明らかにすることこそ,いま求められているのではないか――本書は,日本に遍く存在する「ブラック・アンド・ホワイト企業」を分析し,日本企業の本質を読み解く書。
序 章 ブラック企業論への疑問
第1章 特異な日本の採用・就職
「定期採用」と「中途採用」
ウソがまかり通る定期採用の世界
採用スケジュール
「初任給」
学歴フィルター
採用差別
過剰な自己PRの強要
1990年代以降のいっそうの苛酷化
身元保証という江戸時代からの悪習
定期採用の本質
第2章 入社式と新入社員研修
入社式
戦前の新入社員
ドーアによる新入社員研修の観察
ローレンによる新入社員研修の観察
「ウエダ銀行」の新入行員研修
伊藤忠商事の新入社員研修
ローレンによる日米比較
新入社員研修の日本的特色
会社の修養主義
第3章 会社の共同体的上部構造
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
共同体的上部構造と利益組織的土台
共同体的上部構造としての「社風」
松下電器産業と本田技研工業の交流研修会
尾高邦雄の日本的経営=共同体論
「経営家族主義」の「実証的」根拠
戦前における「終身雇用制」?
経営家族主義イデオロギーの不存在
高度成長期における「終身雇用制」の成立
戦前の会社身分制
俸給と賃金
身分制下の目に見える差別
第4章 従業員組合??「非常に非常識」な「労働組合」
敗戦後における従業員の急速な組織化
戦後に結成された組合を何と呼ぶべきか
従業員組合の特徴
従業員組合の成立根拠にかんする二村説
従業員組合の原形
末弘厳太郎による観察
藤林敬三による観察
従業員組合の自然な感情
労働組合として「非常に非常識」な行動様式
争議中の賃金の後払い
改正労組法と従業員組合への利益供与・便宜供与
従業員組合の本質
従業員組合による共同体的上部構造の形成
従業員組合の興隆と衰退
「労働組合」の重層的定義
会社による共同体的上部構造の維持・展開
トヨタにおける「労使宣言」
第5章 会社による従業員の全時間掌握
利益組織的土台に奉仕する共同体的上部構造
労働時間とは何か
戦前における工場労働者の労働時間
ILO条約と8時間労働制
トマス・スミスの指摘
官吏の執務時間
社員の執務時間
労働時間をめぐる戦前の負の遺産
社員の執務時間と労働者の労働時間の「統一」
軟式労働時間制
執務時間と労働時間の融合
長時間の不払労働
「自主的な」QCサークル
低い有給休暇の取得率
トヨタ過労死事件
名古屋地裁の判決
会社による共同体的上部構造把握の行きつく先
過労死・過労自殺とジェンダー
終 章 自己変革できないブラック・アンド・ホワイト企業
ブラック企業の指標
ブラック・アンド・ホワイト企業への道
時代は働きすぎに向かう
参考文献
あとがき
索 引
野村 正實[ノムラ マサミ]
著・文・その他
内容説明
ここがおかしい日本の会社!誰もが知る有名企業で、相次ぐ過労死・過労自殺。「ブラック企業」対策だけで本当に十分なのか―労働研究の第一人者が提起する新たな日本企業論。
目次
序章 ブラック企業論への疑問
第1章 特異な日本の採用・就職
第2章 入社式と新入社員研修
第3章 会社の共同体的上部構造
第4章 従業員組合―「非常に非常識」な「労働組合」
第5章 会社による従業員の全時間掌握
終章 自己変革できないブラック・アンド・ホワイト企業
著者等紹介
野村正實[ノムラマサミ]
1948年静岡県横須賀町生まれ。1971年横浜国立大学経済学部卒業。1976年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。東北大学大学院経済学研究科教授、国士舘大学経営学部教授を経て、東北大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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