出版社内容情報
PISAの学習・教育観を批判的に検討し、デンマークの教育の理念や実践、日本での先進的な実践等を紹介。真に身につけたい力を探る算数・数学教育とは本来、すでにできあがった体系にもとづく知識や解法を暗記させるものではない。子どもが現実世界と向き合い、自分なりの考えを駆使して、仲間と対話しながら、彼ら自身の数学的なものの見方を育てるのを助けるものである。本書は、新学習指導要領やPISAの学力観等をふまえた上で、算数・数学教育の現状や、今後身につける必要があるとされる力をめぐる議論、日本での先進的な実践、またデンマークの教育の理念や実践等を紹介。これからの算数・数学教育のあり方について考える。
はじめに
序 章 主体的・対話的に深く学ぶ算数・数学教育のために──新教育課程の意義と課題(小寺隆幸)
1 「人格の完成をめざす」ことと算数・数学教育
2 これからの算数・数学教育のために
第?部 日本の算数・数学教育に何が求められているのか
第1章 民主的な社会とともに歩む算数・数学教育(長崎栄三)
1 算数・数学を学ぶ子どもたち
2 算数・数学を取り巻く社会
3 算数・数学教育にかかわる数学の変化
4 算数・数学教育の目的
5 算数・数学教育の目標
第2章 数学的リテラシー論の源流と現在──世界の動向と日本の課題(清水美憲)
1 フィンランドで何が起こったか,世界で何が起こっているか
2 「数学的リテラシー」概念の来歴
3 学校数学における資質・能力論と数学的リテラシーの育成
4 プロセス志向の数学カリキュラムに向けて
第3章 21世紀の数学的リテラシーに向けて──日本での試みから(浪川幸彦)
1 日本における「数学教育問題」
2 科学技術の智プロジェクト
3 OECD・PISA調査
4 中等教育,特に高等学校教育の改革
5 他分野への広がり
第4章 コンピテンシーの多面性と算数・数学教育にとっての意味(松下佳代)
1 コンピテンシーの系譜と多面性
2 算数・数学教育におけるコンピテンシー
3 コンピテンシー批判への応答
第5章 算数・数学の授業を豊かにする「教授学」──「主体的・対話的で深い学び」の強調の前に(増島高敬)
1 算数・数学をいかに教えるのか──斎藤喜博と遠山啓の論に学ぶ
2 自由の森学園での授業から??──「積分」「指数関数と対数関数」
3 自由の森学園での授業から??──確率の導入
4 中学校・高校の授業の「教授学」を!
第?部 対話と協同の授業をつくる
第6章 「多様化」時代の算数・数学の授業づくり──算数・数学は系統的か?(小田切忠人)
1 多様な子どもたちの授業参加
2 系統学習・系統的カリキュラム
3 「算数・数学が系統的である」という授業の実際
4 そもそも算数・数学は系統的か?
5 学習達成が多様な児童・生徒が学び合う授業
6 学習の進展と進行
7 発達観・学力観・教授学習観の転換を
第7章 「わり算」を仲間とともに学び合う授業?(山野下とよ子)
1 授業の構想
2 等分除の意味とかけわり図
3 答えの求め方から筆算形式の学びへ
4 包含除とかけわり図
5 現実世界の課題を共同で考え合う授業を
第8章 数学の認識の深化とアイデンティティ形成──分数の授業やカリキュラムを考えながら(井上正允)
1 分数の意味をめぐって
2 ×(÷)小数・分数の難しさ
3 授業:分数再考??分数からユークリッドの互除法へ
4 授業:分数再考??互除法を連分数で可視化する
5 中学3年生はどう学んだか?
6 算数・数学のつながりをつくる
第9章 研究者のように探究し伝え合う授業──高校1年の課題学習「正多面体」(青木慎恵)
1 RLAの実践
2 コンピテンシー論からの考察
第10章 数学を学ぶ意味を実感する《実験数学》の授業──「問い」を持たせる「2進数で遊ぼう!」とその発展課題?(伊禮三之)
1 アクティブ・ラーニングをめぐる議論
2 数学的問題解決の図式
3 数学的問題解決の図式の逆と「2進数で遊ぼう!」の授業について
4 第1時「2進数で遊ぼう!」
5 第2時「3進数では?──2進数を発展させる」
6 生徒の感想文にみる変容
7 数学と現実世界との交流の中で対話的に考える授業を
第?部 対話を軸に数学的コンピテンシーを育てるデンマークの教育
第11章 デンマークの教育とニス(Niss, M.)の数学的コンピテンシー論(小寺隆幸)
1 数学への意欲や関心が高いデンマークの子どもたち
2 デンマークの教育
3 「コンピテンシーと数学学習」(KOM)プロジェクト
第12章 デンマークのカリキュラムと授業を通して「主体的・対話的で深い学び」を考える(?小寺隆幸)
1 デンマークの「共通目標」
2 デンマークの授業から学ぶ(8年生の授業)
3 「主体的・対話的で深い学び」を創る手がかりとして
第13章 デンマークにおけるコンピテンシー議論の発展と「競争国家」での教育の役割(鈴木優美)
1 デンマークの教育の特性とその目的
2 デンマークにおけるコンピテンシー概念の受容と発展
3 高等学校の目的と自然科学への期待
4 近年のメディアでの若者をめぐる議論と日本への示唆
巻末資料
デンマーク?2009年共通目標?数学科(訳:鈴木優美)
小寺 隆幸[コデラ タカユキ]
編集
内容説明
算数・数学教育とは本来、すでにできあがった体系にもとづく知識や解法を暗記させるものではない。子どもが現実世界と向き合い、自分なりの考えを駆使して、仲間と対話しながら、彼ら自身の数学的なものの見方を育てるのを助けるものである。本書は、新学習指導要領やPISAの学力観等をふまえた上で、算数・数学教育の現状や、今後身につける必要があるとされる力をめぐる議論、日本での先進的な実践、またデンマークの教育の理念や実践等を紹介。これからの算数・数学教育のあり方について考える。
目次
主体的・対話的に深く学ぶ算数・数学教育のために―新教育課程の意義と課題
第1部 日本の算数・数学教育に何が求められているのか(民主的な社会とともに歩む算数・数学教育;数学的リテラシー論の源流と現在―世界の動向と日本の課題;21世紀の数学的リテラシーに向けて―日本での試みから ほか)
第2部 対話と協同の授業をつくる(「多様化」時代の算数・数学の授業づくり―算数・数学は系統的か?;「わり算」を仲間とともに学び合う授業;数学の認識の深化とアイデンティティ形成―分数の授業やカリキュラムを考えながら ほか)
第3部 対話を軸に数学的コンピテンシーを育てるデンマークの教育(デンマークの教育とニス(Niss,M.)の数学的コンピテンシー論
デンマークのカリキュラムと授業を通して「主体的・対話的で深い学び」を考える
デンマークにおけるコンピテンシー議論の発展と「競争国家」での教育の役割)
著者等紹介
小寺隆幸[コデラタカユキ]
1951年生まれ。1975年名古屋大学理学部数学科卒業。2004年東京学芸大学教育学研究科修士課程修了。1975年から2006年まで東京都公立中学校教諭。2007年から2017年まで京都橘大学人間発達学部教授、京都大学教育学部非常勤講師(数学科教育法担当)。現在、明治学院大学国際平和研究所客員研究員。京都橘大学及び明星学園中学校非常勤講師。専門は数学教育学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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