出版社内容情報
徐福伝説から第五福竜丸事件まで、紀伊半島を舞台にした地域から世界史を考えるためのケーススタディ。鉄砲伝来、異国船襲来、捕鯨問題等々、数々の世界史とつながる歴史をもつ紀伊半島。とりわけ日本史における変革期には、紀伊半島は大きな役割を担ってきた。高校での「歴史総合」科目導入を前に、日本史と世界史の融合、地域の歴史をより広い視座から見直す必要性が高まるいま、「地域から世界史を考えるための実験」として問題提起を行う。
はしがき
序 章 なぜ 紀伊半島から世界史を考えるのか(海津一朗)
1 紀伊半島は厄介者の「こもりく」なのか
2 世界に開けた「イリャ・ドス・ラドロイス」
3 近代の紀伊半島??その光と影
4 第二回世界半島会議??那智勝浦町(1999年)
5 あたらしい歴史学・観光学の可能性
第?部 日本のはじまり
第1章 徐福伝説が紀伊半島にもたらしたもの(塩崎 誠)
1 新宮の徐福公園
2 徐福伝説をめぐる歴史叙述の変遷
3 紀伊半島における徐福伝説
4 現在につなぐ紀伊半島の徐福伝説
第2章 大谷古墳にみる古墳文化の国際性(福田光男)
1 大谷古墳の発見
2 朝鮮とのつながり・インドへの道
3 紀伊湊と当時の東アジア情勢
4 世界に目を向けた紀ノ川の王
5 大陸文化への窓口として
第3章 紀三井寺の開基・唐僧為光と「天平の甍」(海津一朗)
1 日中平和友好条約の碑
2 唐僧為光の「竜宮城」伝説
3 鑑真和尚と天平文化
4 描かれた神話??穀屋の絵解き法師
5 アジアのなかの天平文化??為光の正体
第4章 無本覚心の布教が変えた日本人の舌(海津一朗)
1 径山寺味噌の由来から
2 「渡来僧の世紀」の日本僧
3 唐船・仏舎利・尺八の請来
4 日前宮領の開発をめぐって??西大寺派律宗との対決
5 天狗を祀る興国寺??覚心の魔力
第?部 宇宙の中心・高野山
第5章 和歌山の景教碑(小原 淳)
1 1911年の景教碑
2 エリザベス・A・ゴードンの日本体験
3 「東西合一」の夢
4 ゴードンの親ユダヤ主義
5 世界史の中の和歌山、和歌山の中の世界史
第6章 日宋文化交流の場・重源の新別所(林 晃平)
1 高野山におかれた秘密基地
2 重源と日宋交流する文物
3 重源の勧進と新別所の役割
第7章 蒙古襲来を勝利に導いた金剛峯寺(前川未希)
1 浪切不動の威力
2 高野山の神戦を頼りにした幕府
3 蒙古襲来とは
4 蒙古襲来で変わった高野山
5 空海・高野山がもたらした神国思想
第8章 「紀州応仁の乱」にみる村落フェーデ(海津一朗)
1 一揆の時代から平和の時代へ
2 発端はちいさな水争い
3 応仁の乱は紀州から始まった?
4 日本における「神の平和」運動
5 自治の国への思慕
第?部 新・大航海時代
第9章 異国人のみた大航海時代の紀州倭寇(海津一朗)
1 紀州を制するものは世界を制す
2 大いなる共和国
3 もう一つの日本「イリャ・ドス・ラドロイス」
4 日本にふたつの国家??その国境は?
5 秀吉と倭寇のせめぎあう大航海時代
第10章 降倭沙也可にみる東アジアの鉄砲伝来(前川未希)
1 東照宮にある石碑の謎
2 沙也可の由来となった雑賀衆とは
3 根来への鉄砲伝来
4 倭寇がつないだアジアの海
5 降倭がもたらした東アジアの兵器革命
第11章 和歌祭のなかの朝鮮通信使(稲生 淳)
1 和歌祭のなかの唐人行列
2 朝鮮通信使の来日
3 各地に残る通信使
4 李真栄と李梅渓
5 再開された唐人行列
第12章 熊野参詣道とサンティアゴの道(大濱 新)
1 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の現状
2 「熊野参詣道」の文化的景観と歴史
3 「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」
4 「熊野参詣道」の課題
第?部 異国の不審船
第13章 レディ・ワシントン号と初期米中貿易(稲生 淳)
1 日米交流の端緒
2 アメリカ船の大島寄港
3 18世紀末の広東貿易
4 アメリカの広東進出
5 レディ・ワシントン号の派遣
6 新たな史料の発見
第14章 プチャーチン来航と紀州黒船騒動(森田泰充・稲生 淳)
1 ロシアの黒船来航
2 内憂外患の世相
3 ロシアの日本接近
4 紀州の海防と友ヶ島
第15章 樫野埼灯台からみた文明開化(稲生 淳)
1 和歌山県にある条約灯台
2 英仏の対日政策と灯台建設
3 灯台技師ブラントン
4 灯台と文明開化
第16章 外国人がみたノルマントン号事件(稲生 淳)
1 ノルマントン号遭難の碑
2 国民の怒り
3 条約改正のカギ握るイギリス
4 パーマーの「日本通信」
5 ビゴーの風刺画
第17章 エルトゥールル号遭難とオスマン帝国の衰退(稲生 淳)
1 エルトゥールル号の遭難
2 悲劇の軍艦
3 日本派遣の目的
4 アブデュル・ハミト二世
5 日本とトルコ友好の原点
第?部 世界大戦
第18章 「陸奥外交」と和歌山(橋本唯子)
1 陸奥宗光の出自
2 知己による陸奥評
3 陸奥の洋行??1870年・1884年の渡航
4 「陸奥外交」??条約改正の国内情勢と国外情勢
5 日清戦争開戦と「陸奥外交」
第19章 真珠貝ダイバーと帝国主義(田城賢司)
1 オーストラリアに渡った紀州の若者たち
2 死と隣り合わせの採貝
3 採貝業と世界経済
4 戦後の採貝移民
第20章 ケシとアジア侵略(田城賢司)
1 ケシ栽培日本一だった和歌山
2 ケシからアヘン・モルヒネ・ヘロイン
3 ケシ栽培は子ども・女性の仕事
4 アヘン禁止の動き
5 日本のアヘン政策
6 和歌山のケシ栽培と戦争
第21章 ゾルゲ事件被告北林トモの粉河時代(海津一朗)
1 消えたトモ??粉河寺門前の惨劇
2 ゾルゲ国際諜報団事件
3 三枚の写真が語るトモの生涯
4 日本を捨てた理由??ロスでの日々
5 粉河町におけるトモの記憶
6 トモの最期
第22章 イルカボーイズ??熊野の山中に眠る英国人(山口康平)
1 熊野の山中にあった人口一万人以上の町
2 地域発展の源は大地の贈り物
3 紀州鉱山の開発と鉱山町の誕生
4 石原産業とアジアの鉱山開発
5 イルカボーイズと紀州鉱山
6 もう一つの外国人追悼碑
第?部 現代への警告
第23章 クジラの町の移民から学ぶ国際理解(中西 健)
1 「クジラ」の町、「移民」の町
2 太地鯨組遭難事故
3 アメリカ産業を支えた紀南の人々
4 第二次世界大戦とターミナルアイランド
5 「移民」を学ぶことで深まる国際理解
第24章 紀伊大島のクジラと米探検家アンドリュース(櫻井敬人)
1 アメリカの太平洋進出
2 アメリカ捕鯨産業の盛衰
3 熊野灘の「六鯨」
4 ノルウェー式捕鯨の導入
5 紀伊大島、陸前鮎川での調査
6 大島の人々とクジラ
第25章 濱口梧陵と「世界津波の日」(福田光男)
1 「世界津波の日」の制定
2 ラフカディオ・ハーンと「稲むらの火」
3 濱口梧陵について
4 海外への普及
5 防災教育に取り組む広川町と和歌山県
第26章 三度の危機を乗り越えた第五福竜丸(左近晴久)
1 古座で誕生した第五福竜丸
2 ビキニ環礁での被爆
3 核兵器廃絶運動と第五福竜丸
4 第五福竜丸からのメッセージ
あとがき
関係年表
人名・事項索引
村井章介[ムライ ショウスケ]
監修
海津 一朗[カイヅ イチロウ]
編集
稲生 淳[イナブ ジュン]
編集
内容説明
鉄砲伝来、異国船襲来、捕鯨問題等々、数々の世界史とつながる歴史をもつ紀伊半島。とりわけ日本史における変革期には、紀伊半島は大きな役割を担ってきた。高校での「歴史総合」科目導入を前に、日本史と世界史の融合、地域の歴史をより広い視座から見直す必要性が高まるいま、「地域から世界史を考えるための実験」として問題提起を行う。
目次
第1部 日本のはじまり
第2部 宇宙の中心・高野山
第3部 新・大航海時代
第4部 異国の不審船
第5部 世界大戦
第6部 現代への警告
著者等紹介
村井章介[ムライショウスケ]
1949年生まれ。1974年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1993年博士(文学)(東京大学)。立正大学文学部史学科教授、東京大学名誉教授
海津一朗[カイズイチロウ]
1959年生まれ。1983年東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程歴史学第一講座修了。1996年博士(史学)(東京都立大学)。和歌山大学教育学部教授
稲生淳[イナブジュン]
1955年生まれ。1986年兵庫教育大学大学院学校教育研究科教科領域専攻社会系コース修了。元、和歌山県立和歌山商業高等学校校長、和歌山県教育センター学びの丘所長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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