内容説明
北条氏政(一五三九~九〇)関東の戦国大名。北条家第四代当主として最大版図を形成するも、小田原合戦で羽紫秀吉に敗れた北条氏政。汗かけ飯や小田原評定の逸話に見られる低評価は実像を反映しているのか。本書では、氏政の生涯を辿り、その行動の意味を探る。
目次
第1章 家督相続まで
第2章 北条家当主としての成長
第3章 越相同盟と武田信玄との戦争
第4章 甲相同盟から御館の乱への対応
第5章 武田勝頼との戦争と織田政権への従属
第6章 「御隠居様」として氏直を補佐する
第7章 羽柴秀吉への従属交渉と決裂
著者等紹介
黒田基樹[クロダモトキ]
1964年東京都生まれ。1995年駒澤大学大学院博士課程単位取得満期退学。博士(日本史学)。駿河台大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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中島直人
11
(図書館)汁かけ飯や小田原評定のエピソードしか知らなかった北条氏政。著者がいうように稀代の名君だったとまでは感じなかったが、歴史は勝者が作というのを改めて実感する。2018/11/25
BIN
10
初代伊勢宗瑞を始めに氏綱、氏康と有能なイメージが強くあるのに対し、最終的に北条家を滅ぼしたために無能な感じがする4代氏政について初の概説書。有名なエピソードである「汁かけ飯」や「小田原評定」は事実ではなく創作とのことです。読んでいて思ったのが、有能な人材がいないこと。城造りに対してダメ出ししまくらなきゃいけなかったことや氏政が上洛する気だったのに名胡桃城の事件が勃発してしまって使者がうまく対処できなかったことなど。花の慶次での氏政の最後の「我が家は人を残すべきであった」的な発言がまさにその通りだと思った。2019/01/29
MUNEKAZ
10
黒田先生の氏政本。「北条家に関する大まかな説明や用語の解説は他の著作を参考に」として、氏政の生涯に絞って密度を高く紹介している。父・氏康に直言も辞さないしっかり者で大国・北条家の当主としての誇りも持ち続けた氏政の姿を見ると、「駄目な2代目」という言葉で切り捨ててしまうのも勿体なく思ってしまう。また北条家視点から見ると武田信玄とは何とも不気味な存在で、上杉謙信は全く頼りにならない同盟相手だなという印象を強くした。2018/02/22
Toska
5
天下人との関係構築(=服属)という極めつけの難題に直面したのが氏政の世代だった。彼らのほぼ全員が服属までに困難な交渉と交戦を経験したことを考えると、それがどれだけ苦しい選択であったかがよく分かる。「実は有能だった」的な再評価で済ませるのではなく、戦国大名の本質にまで切り込んだ濃厚な氏政論。「最後の戦国大名」という著者の評価には100%同意したい。2022/01/19
Ezo Takachin
4
今までの氏政評を改めさせてくれる書。決して無能な武将ではなかった。家臣や側近にもう少し優秀な人材がいたらと思ってしまう。氏康とは違い、信玄・謙信亡き後も、勝頼、景勝、徳川家康、織田信長、豊臣秀吉など有力武将が多くいた時代。北条家自身そして領国の維持を第一に考え経営していた。秀吉以降の価値観とは違ったために滅びるしかなかったと思う。北条家滅亡ということがなければ、もっと評価されるべき武将であると感じた。同様にやはり北条家の領国経営など学ぶところは多いと感じた。ぜひ、北条の大河ドラマを!2021/02/13