出版社内容情報
カントの自然地理学や地理教育を、カントの哲学全体における経験的なものと理性的なものとを架橋する重要な位置にあるものとして解明 カントの自然地理学や地理教育は、カント哲学研究においてマイナーな研究領域であり、注目を集めることはほとんどなかったといえる。しかし、講義義務がないにもかかわらず、カントが自然地理学の講義を40年の長きにわたって続けていたという事実は、地理教育がカントの哲学において何らかの重要な意義をもっていたのではないかという推測を抱かせる。本書では、カントがその生涯をかけてめざした哲学の成果が、世界市民の教育に結実化していること、そしてその課題実現の中心的な教育カリキュラムが地理教育であったことを、論証している。世界市民の教育というカントの実践的な中心課題を解きほぐすことによって、カントの自然地理学や地理教育を、単に一学問領域としての地理学上の業績としてではなく、カントの哲学全体における経験的なものと理性的なものとを架橋する重要な位置にあるものとして明らかにする。
まえがき
初出一覧
凡 例
序 章
1 研究目的
2 先行研究
3 研究方法
第?部 経験的な働きかけによる道徳的行為の促進
第1章 カントにおける悪とその克服
1 ?1 悪の独自性:感性的なものからの影響
1 ?2 自由と意志
1 ?3 悪と行為
1 ?4 悪の克服と善への素質の回復
第2章 カントの教育思想における幸福の意義
??「感性的な幸福」と「最高善における幸福」の間で
2 ?1 錯綜する幸福についての議論
2 ?2 感性的な幸福の基本的特徴
2 ?3 最高善における幸福
2 ?4 人間形成に見られる幸福
2 ?5 経験的・感性的な働きかけの重要性
第?部 カントの地理教育の人間形成論的意義
第3章 カントの『教育学』における発達段階的教育論??教化を中心にした経験的な働きかけと道徳教育
3 ?1 カントの教育学研究における経験的な働きかけの軽視
3 ?2 『教育学』の歴史的・思想的背景
3 ?3 『教育学』における経験的・感性的な発達段階的教育論
3 ?4 道徳化から世界市民化へ
第4章 カントの自然地理学の歴史的背景と内容
4 ?1 自然地理学をめぐる歴史的背景
4 ?2 自然地理学の基本的特徴
4 ?3 自然地理学の展開
第5章 カントの地理教育と人間形成
5 ?1 地理教育が促す適切な認識形成
5 ?2 地理教育による道徳性と世界市民性の形成
第?部 カントの地理教育の発展:新たな啓蒙と世界市民的教育へ向かって
第6章 カントにおける啓蒙思想再考
6 ?1 『啓蒙とは何か』をめぐる歴史的背景
6 ?2 『啓蒙とは何か』の基本的特徴
6 ?3 啓蒙と世界市民性
6 ?4 啓蒙を現実的に遂行する地理教育
第7章 限界に立ち向かう世界市民
7 ?1 カントにおける世界市民性
7 ?2 限界における世界市民
7 ?3 世界市民的構想に基づく教育
おわりに
あとがき
英文目次・要旨/独文目次・要旨
参考文献
人名索引/事項索引
広瀬 悠三[ヒロセ ユウゾウ]
2017年1月現在 奈良教育大学特任准教授
内容説明
カントの自然地理学や地理教育を、カントの哲学全体における経験的なものと理性的なものとを架橋する重要な位置にあるものとして明らかにする。
目次
第1部 経験的な働きかけによる道徳的行為の促進(カントにおける悪とその克服;カントの教育思想における幸福の意義―「感性的な幸福」と「最高善における幸福」の間で)
第2部 カントの地理教育の人間形成論的意義(カントの『教育学』における発達段階的教育論―教化を中心にした経験的な働きかけと道徳教育;カントの自然地理学の歴史的背景と内容;カントの地理教育と人間形成)
第3部 カントの地理教育の発展:新たな啓蒙と世界市民的教育へ向かって(カントにおける啓蒙思想再考;限界に立ち向かう世界市民)
著者等紹介
広瀬悠三[ヒロセユウゾウ]
1980年生まれ。東北大学文学部卒業、東北大学大学院文学研究科博士前期課程(哲学専攻)修了。京都大学大学院教育学研究科に進学後、ロンドン大学教育研究所(2011‐2012年)、ドイツ・ヴュルツブルク大学留学(2012‐2014年)を経て、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程(臨床教育学専攻)研究指導認定退学。博士(教育学)(京都大学、2015年)。日本学術振興会特別研究員(DC)、立命館大学非常勤講師を経て、奈良教育大学教育学部特任准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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