出版社内容情報
歴史的・理論的検証を行い、保険・共済事業の課題と今後目指すべきあり方について提言する。人間にとって保険は、不測の事態に備えるために必要不可欠なものであるが、現状としては保険金不払いの問題があったり、金融資本の一部のような様相を呈していたりと、課題は山積している。本書では、そのような問題が歴史的にどのように生じてきたのか検証し、これからの社会に求められる保険のあり方を模索する。古くて新しい研究分野に一石を投じる一冊である。
はしがき
序 章 保険理論の体系化に向けて
1 本書の研究方法・内容
2 本書の構成
第?部 理論編
第1章 保険理論の体系化と保険ファンドの命題
1 保険ファンドの命題
2 保険ファンド概念およびその限定点と制約点
3 保険ファンドと蓄積ファンドの関連性
4 保険ファンドの創造理由についての分析の重要性
第2章 保険ファンド論における家計保険の理論化
1 保険ファンドの命題と家計保険
2 保険ファンドの命題の限定的解釈
3 保険ファンドの命題と保険制度
4 保険ファンドの命題の創造的発展による家計保険の理論的体系化――笠原長寿教授、モティレフ氏および著者の見解
5 保険ファンドの命題の創造的発展
第3章 「保険資本論」における家計保険――家計保険の経済学的性格分析・規定のための視点
1 家計保険の経済学的性格分析・規定のための方法論
2 「保・険・資・本・」論における家計保険の経済学的性格分析・規定
3 「保険資本論」における家計保険の経済学的性格分析・規定――シュリーサー氏、三輪昌男教授および水島一也教授の見解
4 家計保険の経済学的性格分析・規定のための視点
第4章 家計保険としての損害保険――家計保険の経済学的性格分析・規定
1 家計保険の経済学的性格分析・規定における損害保険
2 保険本質論的方法の批判的検討
3 保険経営史的方法の批判的検討
4 資本制再生産機構と家計保険としての損害保険の関連的把握
第5章 社会保険と保険理論――帝政ドイツ社会保険を中心にして
1 保険理論の体系化のための社会保険の歴史的・理論的視角
2 共済金庫と社会保険との関係
3 ドイツにおける保険事業の発展と社会保険制度の導入
4 社会保険創設と保険資本による家計保険事業の歴史的関係
第6章 イギリスにおける社会保険制度創設の意味
1 イギリス資本主義の展開過程における保険資本の独占化と社会保険制度創設
2 イギリス独占資本主義と保険業の集積・集中
3 社会保険制度導入と労働者の生活状態
4 金融資本形成における簡易生命保険部門をもつ独占的保険資本
5 社会保険と簡易生命保険事業の歴史的、具体的相関関係
6 独占的保険資本の市場開拓手段としてのイギリス社会保険
第7章 資本主義社会における社会保険の歴史的役割――「ビヴァリッジ・リポート」を中心に
1 「ビヴァリッジ・リポート」における私的保険市場の整備、拡大策としての側面
2 社会(国民)保険制度改革とビヴァリッジ社会保障改革プランの導入
3 ビヴァリッジ社会保障プランの簡易生命保険事業への影響
4 ビヴァリッジ社会保障プランにおける任意保険の重視と労働組合の排除
5 「ビヴァリッジ・リポート」の性格
6 「ビヴァリッジ・リポート」に見る資本主義的社会保障・社会保険と保険資本の関係
第?部 実証編
第8章 社会保険の後退と生保・損保の参入
1 社会保障費抑制策を背景とした社会保険の後退と生保・損保の代替機能の拡大
2 公的医療保障制度の改革と生保・損保会社の対応
3 公的年金制度改革と生保・損保会社の経営戦略
4 生保・損保会社による社会保険の代替化と寡占的市場支配の拡大
第9章 社会保障制度改革における民活化政策と保険事業の代替的役割
1 医療保険制度改革と私的医療保険による公的医療保険の肩代わり
2 医療保障制度の構造的転換
3 健康保険法改定に対応した1985年保険審議会「生命保険答申」
4 政府・財界の社会保障改革と求められる生存権確立のための国民的運動の展開
第10章 市場環境の変化と保険・共済事業
1 金融・保険政策のねらいと共済事業の課題
2 「新金融効率化政策」の導入と二重―格差構造の温存
3 保険事業と共済事業における市場環境の変化への対応
4 共済事業の現代的課題
第11章 イギリスの社会保障制度改革と民間保険事業
1 イギリスの社会保障制度改革における民間保険事業の役割
2 イギリスの社会保障制度改革
3 社会保障制度改革に対する民主社会主義的社会政策論の見解の検討
4 社会保障制度の見直し阻止・拡充の国民的運動と社会保障の補完的役割
第12章 保険事業における規制緩和政策と共済事業の課題
1 保険事業における規制緩和政策の下での共済事業の課題
2 規制緩和政策とそのねらい
3 保険事業における規制緩和政策の要因
4 保険事業における規制緩和政策の問題点
5 改定保険業法の施行と共済の役割
6 共済事業・協同組合のアイデンティティ
第13章 共済規制をめぐる動向と共済運動の課題
1 共済規制と共済を守る運動の意義
2 保険業法と共済
3 1995年および2005年保険業法改定の経過と背景
4 共済運動の歴史的必然性
5 共済理論と共済運動をめぐる新たな展開
6 共済運動の今日的意義・課題
第14章 TPP協定と共済規制
1 国民の生存権を脅かすTPP協定参加交渉を契機にした共済規制
2 共済規制政策とTPP参加
3 TPP協定参加交渉に向けた日米事前協議におけるアメリカの要求内容とその背景
4 TPP参加交渉に向けた農協(共済)改革
――規制改革会議・農業ワーキンググループ「農業改革に関する意見」および規制改革会議「規制改革に関する第2次答申――加速する規制改革」(2014年6月13日)
5 協同組合(共済)の果たす役割の増大
参考文献
索 引
押尾 直志[オシオ タダユキ]
著・文・その他
内容説明
保険のあるべき姿とは何か。歴史的・理論的検証を行い、保険・共済事業の課題と今後目指すべきあり方について提言する。
目次
保険理論の体系化に向けて
第1部 理論編(保険理論の体系化と保険ファンドの命題;保険ファンド論における家計保険の理論化;「保険資本論」における家計保険―家計保険の経済学的性格分析・規定のための視点;家計保険としての損害保険―家計保険の経済学的性格分析・規定;社会保険と保険理論―帝政ドイツ社会保険を中心にして;イギリスにおける社会保険制度創設の意味;資本主義社会における社会保険の歴史的役割―「ビヴァリッジ・リポート」を中心に)
第2部 実証編(社会保険の後退と生保・損保の参入;社会保障制度改革における民活化政策と保険事業の代替的役割;市場環境の変化と保険・共済事業;イギリスの社会保障制度改革と民間保険事業;保険事業における規制緩和政策と共済事業の課題;共済規制をめぐる動向と共済運動の課題;TPP協定と共済規制)
著者等紹介
押尾直志[オシオタダユキ]
1949年生まれ。明治大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学、博士(経済学)。現職、明治大学商学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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