内容説明
九条兼実(一一四九~一二〇七)平安末期~鎌倉初期の貴族。当時の史実を伝える一級史料として知られる公家日記『玉葉』を遺した九条兼実。平安の時代を一挙に崩壊させた保元・平治の乱、平氏の滅亡、後白河院との確執、そして法然よりはじまる新仏教…動乱の時代のさなか、摂関藤原家に生まれたばかりに数奇な運命を余儀なくされた、ひとりの貴族の哀歓を浮き彫りにする。
目次
第1章 摂関家の末葉
第2章 儀礼政治家
第3章 動乱の時代
第4章 交替する覇権
第5章 摂政兼実
第6章 終局の執政
第7章 晩年の兼実
第8章 九条兼実の和歌
著者等紹介
加納重文[カノウシゲフミ]
1940年広島県福山市生まれ。1971年東京教育大学大学院博士課程単位取得退学。その後、秋田大学講師、平安博物館講師、京都女子大学助教授を経て、同大学教授。現在、京都女子大学名誉教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
3
平安時代末期から鎌倉時代初期の公卿だった九条兼実の伝記です。激動の時代をくぐり抜けてきたので、老練な政治家だと思っていましたが、そうではないようです。時の権力者から常に距離を置き、故実や先例による儀礼政治に特化していく姿に対して著者は九条兼実の日記「玉葉」などを引用しながら、かなり批判的に論じています。ただ当時のことを考えると最後には失脚するものの、左遷や流罪を避けて九条家の基礎を築いた点だけは評価していいのではないかと思います。2018/06/04
鈴木貴博
2
九条兼実。幼少時に父忠通が一方の当事者となった保元の乱が発生、そして平家全盛から源平争乱、頼朝時代にかけて、2人の兄の系統が浮沈を繰り返す中しぶとく生き残り、九条家の基礎を築く。法然上人に帰依し浄土宗を庇護した人としてもなじみ深い。乱世の中でも日常の関心事は先例、何かあれば歌を詠み、祈る。責任ある判断は回避。コップの中の競争にうつつをぬかす。貴族の現実での力が失われるのは当然なのだが、その分虚職としての摂政関白の地位は五摂家の成立へ秩序化され、貴族は文化の担い手になっていく、そんな時代がよく理解できた。2018/08/06
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