内容説明
農業の新たな担い手として、いま注目を浴びる「企業による農業への参入」。農地法をはじめ、参入を阻んでいたさまざまな制約が近年、法改正などにより緩和されてきている。本書では、企業ならではの経営資源を活かし、新たなビジネスモデルを生み出しているカルビーやカゴメ、ローソンなど各社の取り組みとともに、それらを支える植物工場(施設栽培)のメカニズムや制度的な変遷を、専門家が論じる。
目次
第1章 企業参入と地域の農業―制度的変遷・現状と展望
第2章 企業の農業参入とその課題―植物工場を中心に
第3章 ジャガイモから見える農業の未来―カルビーとスマート・テロワールへの道
第4章 大型菜園に託す新しい農業ビジネス―カゴメの生食用トマト栽培への挑戦
第5章 コンビニエンスストアのファーム事業―本気で農業に取り組んだローソンの戦略
第6章 人工光型植物工場の現状と課題―コスト面からみた光の最適制御
第7章 植物生産システムの開発と展開―エスペックミックの事例
第8章 植物工場の健康食品事業への展開―日本アドバンストアグリの事例
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
人生ゴルディアス
9
本屋で植物工場とかその手の本を探すと、2014年前後のものが多いのだが、規制緩和などもあってブームだったんだな。その後の新刊が並んでいないあたり、お察しだ。本書内でもコンサルの人が、ブームはすぐ終わるから参入するならブーム終わって廃棄設備が出るからそれを安く購入したほうがいいとか辛辣すぎて笑う。慧眼。登場する企業を検索すると、体感で3~4割が廃業という感じか。ローソンファームも本書内だとイケイケドンドンだけど結構閉鎖してる。順調なところもあるようなので、今振り返ってそのあたりの分析を知りたいところだ……。2023/06/01
Issei Harada
1
農業にとって企業の参入はある意味で新しい風をもたらしている。 新しい人材(これまで獲得が難しいような人材)の確保、植物工場という新しい形態の農業、コンビニエンスストアなどの参入。 特に、囲い込みとはなることのない(行政はそれを恐れているのだが)企業参入のもたらすメリットは大きかった。 この産業はあまりに偏った人材配置である。それが故に、新しい動きに繋がらない。 視点の違うところからアプローチを入れることも面白い。2018/10/19
いっちょむ
0
「企業参入」には非常に多様な類型があるが,石田一喜氏は,①農地を所有,②農地はリース,③農地は使わず,④農作業を受託,⑤生産を委託(契約栽培など)と分類(6頁以下)。イオン,キューサイ,ドール,イトーヨーカ堂,ローソン等の参入事例を分析し,「受け入れる地域側」の「農業生産性」が重要だと(地域間競争)。/個人的に面白かったのは,カルビーとカゴメ,それぞれの野心的挑戦。例えばカルビーは,ジャガイモの契約栽培農家と共に,プロセス・プロダクト・マインド,「三つのイノベーション」(143頁,元社長・松尾雅彦氏)。2016/08/20