内容説明
孝謙・称徳天皇(七一八~七七〇、在位七四九~七五八・七六四~七七〇)。異例の女性皇太子を経て即位し、藤原仲麻呂ら多くの政敵と闘い、父聖武天皇の仏教政策を継承しつつも、道鏡を重用し独自の政治を行った孝謙・称徳天皇。本書では「王権と仏教」「女性と仏教」という視点から、その実像に迫る。
目次
第1章 阿倍女王の出生―光明子所生草壁皇統の女子
第2章 阿倍内親王の哀楽―弟夭折と母立后
第3章 女性皇太子への道―立太子計画と東宮教育
第4章 阿倍皇太子の苦悩―女性皇太子の五節の舞
第5章 孝謙天皇の自覚―即位と崇仏天皇の継承
第6章 孝謙太上天皇の反撃―出家と恵美押勝打倒
第7章 称徳天皇の矜持―尼天皇重祚と道鏡法王
第8章 称徳天皇の手腕―女帝としての政治
第9章 称徳天皇の夢思―出家者皇位継承の模索
第10章 女性天皇の終焉―晩年の祈りと「負の記憶」
著者等紹介
勝浦令子[カツウラノリコ]
1951年生まれ。1981年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。高知女子大学助教授などを経て、東京女子大学現代教養学部教授。専攻は日本古代史。博士(文学)東京大学。著書に『女の信心―妻が出家した時代』平凡社選書、1995年“第11回女性史青山なを賞”受賞など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紫草
9
孝謙・称徳天皇とか、お父さんの聖武天皇とか、なんだか仏様に祈ってばかりの弱々しいイメージを持っていましたが、国を治める天子に徳がないと、天が怒って厄災をもたらすと思われていたこの時代、藤原四子を初めとして大勢の人が亡くなる疫病の流行と大地震や旱魃などが次々と起こった時の聖武天皇の気持ちを想像するとかわいそうで。これらが起こったのはあなたに徳がないからではないって教えてあげたい。必死で祈ったんだろうなあ。称徳天皇が出家することで性を超越する存在になったというのにはなるほど。今も続くジェンダー問題。2025/03/20
鈴木貴博
1
孝謙・称徳天皇の評伝。はじめは生まれてきた境遇、環境のもと、父聖武天皇、母光明皇后が掲げた理念、構想した路線の中でのものだったが、後には孤独の中で、自ら思索し判断し、理念を立て、時に非常に近しい者を含む政敵と戦いながら、信じる道を進んだ。著者も言うように、孝謙・称徳天皇を語ることは奈良時代政治史の主要事件の大半を語ることであり、まさに時代を象徴する人物と言えるし、その生涯は後世にも波紋を残した。思うに、悪意のある印象や誤伝、誤解も含む後世への様々な影響は案外大きい気がする。整理し、思索してみたい。2019/01/03