内容説明
阿弖流為(?~八〇二)陸奥国胆沢地方の蝦夷族長。奈良時代末~平安時代初期の国家と蝦夷との戦争において蝦夷軍の総帥として戦い、最後には自ら投降し斬首されて世を去った阿弖流為。長く転戦を重ねながら、征夷の時代を終結させるために、国家側社会との平和・共生のありようを模索し続けたその生涯の真実に迫る。
目次
第1章 蝦夷の世界
第2章 生い立ち
第3章 平和の翳り
第4章 戦乱勃発
第5章 伊治公呰麻呂の乱
第6章 延暦年間前期の辺境情勢
第7章 延暦八年の征夷
第8章 試練の秋
第9章 平和の恢復
著者等紹介
樋口知志[ヒグチトモジ]
1959年東京都生まれ。1982年横浜国立大学教育学部卒業。1987年東北大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得中退。東北大学助手、北海道教育大学助教授、岩手大学助教授を経て、岩手大学教授(人文社会科学部)、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スー
18
106資料が少ない阿弖流為をどう書くのかと楽しみにしていました。やはり資料が少ないのでどんな人だったのかは推測するしかない、まず阿弖流為と仲間達は日本とは友好期間に生まれ育ったので平和の大事さを十分理解していたと思われる。蝦夷達の立場に立ち日本との中を保っていた一族が没落してから不穏な雰囲気になり阿弖流為達は争いに巻き込まれ仕方なく立ち上がった印象です。阿弖流為の闘いは坂上田村麻呂の内部切り崩しにより自壊したように見えるが降伏した蝦夷達が身の危険を訴えなかった事と阿弖流為と母礼の死後に反乱がなかった事から2021/09/09
ジャズクラ本
15
◎素晴らしい本だった。著者は岩手大学の学者さんだしミネルヴァの評伝書なので難しく出てくる人名地名にも知見はない。しかも阿弖流為の名は史上の文献に4回しか現れず、その軌跡は他文献による捕捉を求めながら強い想像を働かせるより他ない。中盤までの阿弖流為をとりまく蝦夷と官軍の状況は殺人的な難しさだが、断片的な事象の積み重ねによって次第に雄々しい阿弖流為像が浮き彫りになっていく。奈良平安の期に敢然と生きたこの人物の血が我々のなかにもきっと流れていると信じたい。知性に裏打ちされた学者さんのロマンの詰まった本でした。2020/08/31
可兒
2
ブームの時に一世を風靡したのとはまた違うアテルイ像。こういう新しい議論が分かりやすく示されるからミネルヴァはやめられない2013/12/10
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
1
律令国家にちょっかい出されて大迷惑。奈良側の歴史からみるとひどい野蛮人に思えるかもしれないけど、人のつながりのある都以上に豊かだった(それゆえ都が横取り画策)とても心優しい人たちだと思った。実際蝦夷へ派遣された人たちは最初は蝦夷打つべしと力んでいたもその後トーンを落としたことから、事情を把握しない天皇から叱られるということが。都に引きこもりではわからないのだな、都合のいい報告しか受けないし。阿弖流為が死刑にされた場所が大阪の交野にあったとは知らなかった。桓武天皇鷹狩の山がある地域だそうだ、生駒市の北。2019/07/01
笛吹岬
1
同時代の文字資料がほとんどないアテルイを、考古学の成果を活用して、よく描いている。副題も効いている。2014/02/08