内容説明
穂積重遠(1883~1951)法学者。大正デモクラシー法学を代表する法学者として東宮大夫、最高裁判事を歴任した穂積。法を専門家の独占物とせず市民によって実現されるものと捉える法思想はいかにして生まれたのか。家族法学の開拓者の生涯に迫る。
目次
序章 子として、孫として―多面体の揺籃(一八八三~一九〇四)
第1章 継走のために―旅立ちのとき(一九〇四~一七)
第2章 希望にみちて―立法と社会教育・社会事業(一九一八~三一)
第3章 家族法のパイオニアとして―「人と人の結合にあり」(一九三三)
第4章 難局をいきる―公人として、私人として(一九三一~四五)
第5章 新生にむけて―いまこそ、われらの法を(一九四五~五一)
終章 市民=法学者として―翼を広げて(一九五二)
著者等紹介
大村敦志[オオムラアツシ]
1958年千葉県生まれ。1982年東京大学法学部卒業。東京大学法学部助教授を経て、東京大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ukiyo_san
1
面白い。大村先生の場合、難しく複雑なことをふわっと易しく面白く意外な角度からまとめる手腕は本当に鮮やかと言うしかないのだが、他方でそれは「ふわっと」なので重厚さや深さには欠けるという「短所」でもあり、著書から講義まで多かれ少なかれその傾向が見られる(ある種重遠風かもしれない笑)。評伝という形式にはその傾向がプラスに働いたと思われ、自負の通り重遠を多面的に描出できている。歴史学のトレーニングを受けていないことを謙遜しておられるが、実定法研究者としては高い水準にあると思う。あ、でも先生、誤字が多すぎますヨ。2014/03/01
てくてく
0
近現代の日本法を考える上で忘れることのできない穂積重遠の伝記。副題にあるように「社会教育と社会事業とを両翼」と書いている様に、研究者、大学人、家庭人としての重遠を描きながら、彼が法律を非法律家に噛み砕いて理解させようとしたという努力や、女性や子どもなどの社会的弱者に関心を抱き続けた様が強調されている。個人的に重遠が何故、児童虐待問題に関心を抱くようになったか関心があったので、そのあたりの記述がとても参考になった。また、重遠の娘が研究者であり、清泉女子大学セクハラ事件の被害者支援を行っていたことが新鮮だった2013/11/10