内容説明
本書では、英米の最新の法思想史研究、あるいは、わが国ではほとんど触れられることのなかった一次資料などを踏まえつつ、クックからリアリズム法学に至る、近代の裁判を巡るコモン・ロー法律家の思想を包括的に検討している。コモン・ローのコンテクストを強調し、新たな観点から近代英米の法思想を捉え直すことで、裁判を巡る様々な叡智に光を当てつつ、日本における英米法思想史研究の包括的なアップデートを試みる。
目次
第1章 法実証主義的コモン・ロー思想の成立―コモン・ローの正統性危機とヘイル
第2章 ベンサムとコモン・ロー―コモン・ロー思想の三類型に対する包括的批判
第3章 コモン・ロー思想の再生―分析法学と歴史法学
第4章 アメリカのコモン・ロー思想と共同体―イギリス法実証主義に対するアンチテーゼ
補論 近代英米の法の支配に関する法思想史的考察
終章 現代英米の法理学とコモン・ロー伝統
著者等紹介
戒能通弘[カイノウミチヒロ]
1970年東京都生まれ。2000年ロンドン大学経済政治学院LL.M.課程修了。2001年同志社大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了。現在同志社大学法学部准教授。博士(法学)。著書、『世界の立法者、ベンサム―功利主義法思想の再生』(日本評論社、2007年、第6回天野和夫賞を受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちまき
1
仕事に関連して英米法の通史的なものを読みたく、図書館で発見した本を読んでみた。初学者の立ち入る本ではなかったかな、と思いつつ、丁寧に歴史的な展開を追い、論点となる切り口を明確に示してくれている。英米法というが、アメリカ、イギリスの歴史的な部分で、当然そのベースは違い、対比されることが多いところは興味深かった。法を作る源と、その法の拠り所になる源、行政と司法の関係、法と共同体の関係、、、数年後にまた読んでみたい。2020/07/26
らびあ
0
コモン・ローについて多方面から各思想家の考えを対比している。各思想の細部には個人的に理解が及ばない部分もあり勉強不足を感じたが、各章の小括がわかりやすく、対立構造の要点を知ることができた。ハート・ドゥオーキン論争はそれまでの章の割にシンプルに感じたが、思想史の締めとしてはそういうものなのだろう。2018/04/24